「誰か帰って来たね。隠れよう」

そもそもここから間違っていたことにもっと早く気づくべきだった。十四松は私を押入れに押し込むと、後から自分も入ってきた。羽毛布団と大人二人がぎゅうぎゅうにつまった密室は息苦しいどころではない。久しぶりのおうちデートを邪魔されて十四松は少々機嫌を損ねていたが、かくれんぼのような今の状況を少なからず楽しんでいるみたいだった。
襖を数センチだけ開け、外の様子を伺う。程なくして廊下を歩く足音がして部屋に誰かが入ってきた。

「一松兄さんだ」
「四番目のだっけ」
「そう。根暗の」

十四松の顎の下に収まる形で、私も襖の隙間から外を覗いた。四番目の兄はくたびれたスエットを引きずって本棚を物色している。しばらくすると、雑誌数冊を携えて部屋の中央に腰を下ろした。本を読むのだろうか。だとしたらしばらく動きはないだろうし、隠れて見ていても仕方がない。それとも何かあっと驚かせるような秘策を十四松が考えているのか。

「ねぇいつまで隠れてるの。このままだと体勢きついよ」
「いいから見てなって」

正座のままもじもじする私を促し、十四松はなおも兄の様子を伺っている。根暗の兄が家でそんなに面白おかしい行動を取るのか疑問だったが、今は黙って従うことにした。
つまらなそうにページを捲る彼は特に変わった様子はない。距離があるためどんな雑誌を読んでいるかは見えない。十四松の話から猫好きということは知っていたので、そういった類のものだろうと当たりをつけた。

「ほらナマエ、よく見てな」

十四松に肩を叩かれ、遠くにやっていた意識を一松さんのほうに向ける。先ほどとそこまで変わったようには見えなかったが、注意して見るとだんだん息が荒くなっている気がする。静かな室内に紙が捲れる音と、苦しげな鼻息が響く。まさかと思ったそのとき、私の嫌な予感は的中した。
一松さんの手がスエットの中に伸びたのだ。
くたくたに着古したズボンは、中で動く右手の動きに合わせて股間に皺を寄せる。手を何往復かした後、窮屈そうにしていたソレをついにズボンから取り出した。既に固く勃ち上がったソレはグロテスクに脈打ち、根元を握る度ピクピクと痙攣していた。最初よりも激しさを増した動きで根元から先っぽへ、骨張った手が上下する。くちゅ、くちゅ、と粘着質な音と低く呻くような声に、耳から犯されていく感覚に襲われる。自分は見てるだけなのに、とてつもなく恥ずかしい。十四松も一人でこういうことをしてるのかも、と思った途端、後ろを振り返ることができなくなってしまった。十四松は今どんな気持ちでこれを見てるのだろう。

「十四松…」
「どうしたの?」

いつの間にか私は十四松の脚の間に座っていて、外の光景から逃げようとも逃げられない体勢になっていた。抱え込むように腕を回され、抵抗しようとしたところで十四松の手が私の太ももを撫でた。

「っ!」
「だめだよー声出しちゃ。一松兄さんにバレたらどうするの」

たしかに今覗いてることがバレたら一大事だ。必死で口を押さえていると、耳元で「良い子」と囁かれ、ぴくんと肩が揺れてしまった。私の反応に笑う声が聞こえたが、声を漏らさないことに精一杯で、とても怒る余裕などない。
すると調子に乗った十四松があろうことか下着の中に指を入れてきた。密室で、音を立ててはいけない状況。しかも馬鹿力の男に後ろから羽交い締めにされているのだ。元から抵抗するなど絶望的だった。
節くれだった長い指が、割れ目とその前にある突起を優しく撫でた。ぴちゃ、と水分を含んだ音が嫌と言うほど聴覚を刺激する。

「すげー濡れてるじゃん」
「いや…」
「兄さんのオナニー見て興奮したんだ」
「ちがう、ちがうの」
「ちんこ欲しくなっちゃった?」

物欲しそうに涎を垂らすそこに、十四松の指が入ってくる。十分に潤っていたため一気に楽々と二本を咥え込んだ。同時に反対の手は胸に伸びて下着を乱暴にずり上げる。既に勃ち上がっている中心は軽く摘まれただけで絶頂を迎えそうなほど気持ち良い。くりくりと優しくつねられて、人指し指で突起の先端を転がされる。少しかさついた指の先が乳輪をなぞる度、思わず声が出そうになる。意識が朦朧としてきたのを見計らってか、濡れてほぼ意味をなさなくなったパンツも脱がされた。酸素の薄い押入れの中で、もう抵抗する気も起きなかった。くったりと十四松の胸に背中を預けて目をつむる。
そろそろ一松さんのアレも終わるだろう。そして部屋から出てったら思う存分十四松を叱ろう。その前に、中途半端にその気にさせた責任は取ってもらいたいところだけど。
そこまで考えたとき、何か違和感を感じた。先ほどまで聞こえていた息遣いも、粘膜の擦れる音も聞こえない。空気が変わった気がしたのだ。
考えたくはなかったが、恐る恐る、目を開けてみた。

視界が、明るい。

「え…」

顔を真っ青にした一松さんが、こちらを見ていた。

「あは、ごめんね一松兄さん」

押入れの襖は全開に開いていた。力の入らない私は後ろからぎゅうぎゅう押し出され、一松さんの前に無残にも転がる。

「お、おま、なんで…?」
「ナマエが兄さんのちんこ欲しくて堪らないみたいだったから」

四つん這いで押入れから出てきた十四松は、すぐに私の体を掴むと両脚を開いて見せるように固定した。

「いやっ!やめて!」
「ほら、見て。こんなに濡らしてんの」
「やだよ、離して…!」
「ナマエね、兄さんのちんこ見てこんなにしたんだよ」

十四松の指で広げられたソコはお漏らししたようにぐっしょり濡れていた。目の前の一松さんはごくんと喉を鳴らして凝視している。その間にも次から次へと愛液が溢れて、お尻を伝い流れて畳を汚した。情けなさで泣きそうだった。

「ねーナマエ、一松兄さんってまだ童貞なんだよ」
「おいお前…!」
「卒業させてあげてくんない?俺一松兄さんならいいよ」

いきなり何を言い出すんだろう。驚いて振り返るも、十四松は冗談で言ってるのではないようだった。

「いや何言ってんの。僕別に弟の彼女とやるとか、そういうシュミないし…」

しかし先程元気を無くしていた一松さんの股間は、もう既に元気を取り戻しつつあった。十四松よりは小さいけど、ピンク色で血管が浮き出た一松さんのソレはとてもいやらしい。これが中に入ってきて動き回ったら、とてつもなく気持ち良いだろうな。頭ではいけないと理解しながらも、股がじゅん、と濡れてくるのがわかった。

「だってよ。どうするナマエ?」
「…いいよ。やっても」
「へ?」

目を白黒させる一松さんの肩を押して跨がる。性器同士を擦り合わせるように腰を動かすと、「ひぅ…」と女の子みたいに喘いだ。

「待って、そんないきなり…」
「これから入れるんだから、我慢してください」
「あっ、あ、だめ……っ!」

何往復か腰を前後したところで、じわ、と生暖かいものが股を濡らした。見ると、赤く腫れた亀頭から白いものが垂れていた。

「あーあもったいない。まだ入れてもないのに」
「十四松、そんなこと言ったらかわいそうでしょ」

一度出したけどまだ硬さを持ったままだったので、手で扱いてみる。するとみるみる立派に育っていく一松さんのソレ。今度は達してしまう前に中にいれようと、腰の位置を調節してゆっくり下ろす。

「あ、っひ、すご…入っていく……」

結合部を見ながら、一松さんは泣きそうな顔をしていた。動くとまたすぐ終わってしまうと思いそのままでいると、飽きてきたのか、十四松が私の身体を弄り始めた。
最初は胸、背中、腰、そしてあろうことかお尻に指を這わせてきた。

「ちょっと、どこ触って…」
「いいからそっち集中しててー。俺は俺で楽しんでるから」
「そんなこと言ったって…っん!」

そんな所触られたことないのに、くすぐったいような、おかしな快感が全身に走る。愛液を絡めて、つぷ、と指が中に入ってきた。腰が逃げそうになるが、一松さんに下からしっかりと掴まれているため身動きが取れない。

「ナマエちゃん、どうしたの。動いていいよ」
「ナマエ、早く動いてあげなよ」

太い指が中を探るように這い回る。やっとの思いで少しだけ腰を浮かし下ろすと、膣だけでなく後ろもきゅうきゅう伸縮して、十四松の指を締めつけてしまう。
私がまともに動けないのを見て一松さんが下から突き上げてくる。騎乗位を普段あまりしないせいか、慣れない刺激に身体が過敏に反応する。開きっぱなしの口から涎が垂れたのを一松さんが掬い取って、自分の口に運んだ。

「ナマエちゃん…かわいい…はぁ」
「あっ…ん、ん…っ」
「ねぇキスしたい…おねがい…」

一松さんが手を伸ばすので身体を倒そうとすると、後ろから凄い力で捕まれ、横を向かされた。

「なに…っん!」

十四松に口を塞がれて、息つく暇もなく舌を捻じ込まれる。厚ぼったい舌が歯列を撫で、口の中隅々まで丁寧になぞっていく。苦しくて胸板を叩いても一向に止めてくれない。いつもはフレンチキスが好きで、こんなにねちっこいキスは滅多にされないのに。
やっと解放された頃には、まともに話せないほど呼吸が乱れていた。
十四松は私の口に溜まった唾液を吸い出すと、それを口に溜めたまま一松さんにディープキスをした。

「んぐ!ごほ…っげほ」
「一松兄さんにはそれで充分だよ」

一松さんはしばらくむせていたが、一滴でもこぼすのを惜しいというように口の周りをぬぐって舐めた。そして弟にこんな扱いをされたというのに、とても幸せそうだった。

「一松さん、美味しい?」
「うん…。ナマエちゃんのヨダレ美味しい」
「ヨダレだけ?」

腰を揺すると一松さんはまた嬉しそうに喘ぐ。

「あひっ…おまんこも…っ美味しいです…!」
「うん。一松さんのちんちんも良いよ」
「嬉し…!あ、っんん…イク…いっちゃう」
「いいよイって」

びくびくと全身を痙攣させたのを見て素早く腰を浮かせる。勢いよく吐精したものは私と一松さんのお腹にぱたぱたと飛び散った。

「よかったね兄さん。卒業できて」

力の抜けた私を抱きとめながら十四松が言った。一松さんはいまだ焦点の合わない目でぼうっとこちらを見ている。

「これから俺とナマエでやるけど、どうする?見てる?」

十四松の呼びかけに、一松さんは力なく頷いた。



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