「さっきからなんで口もごもごしてんの?」
「口内炎ができちゃってね」
「ふーん」

聞いてきたくせにあまり興味なさそうに空返事して、十四松くんは再び私のスマホをいじり始めた。野球ゲームのアプリをダウンロードしてあげてから、会う度にどんどんレベルを上げていて、今では全国で片手に入るほどの実力チームに成長した。無課金でこれはすごい。
ちょうど他の兄弟いないからウチ来る?と電話があって行ってみれば、特にプランはなかったようでいつも通りだらだらと時間を過ごしている。床に放ってあったモテる男のためのファッション誌も読み飽きてしまった。何か他にないかと本棚を物色することにした。少年漫画、レシピ本、ねこのきもち、ときてやけにケバケバしいピンクの背表紙が目に入った。なんの気なしに手にとってみる。すると、こちらを挑発的に見つめるほぼ裸の女の人と目が合った。

「うわ」

なかなかえぐい格好をしている。表紙でこれなら、中身は一体どんなことになっているんだろう。
男が6人もいればこういうのがあってもおかしくはないけど、まさかここまでオープンに置いてあるとは思わなかった。驚きつつも1ページ、また1ページとページを捲る手が止まらない。

「ナマエちゃん」
「わ、びっくりした。ゲームは終わったの?」
「うん。だから俺と遊んで」

そういえばゲームの音が止んだと思ったら、十四松くんがすぐ後ろに立っていた。ナース服のいやらしいお姉さんにさよならして、彼のほうを向く。

「ごめんね、雑誌勝手に見ちゃって」
「いいよ。それ俺のだし」
「あっ十四松くんのなんだ」

ここまで開き直られるとむしろ清々しい。あっけに取られる私と対照的に、十四松くんはいつも通りへらへら笑っている。

「ゲームしようか」
「なんのゲーム?」
「ナマエちゃんを可愛がるゲーム」

なにそれ、私が言うのを待たずに、十四松くんは唇に吸い付いてきた。息するのを許さないほど口の中を舐め回される。舌の裏側、歯列、内側の敏感な所を舌がなぞっていく。頭がほわほわとしてきたところで、ある一点で動きが止まった。

「口内炎みっけた」
「ん、いひゃい…」

そこからは私の息が切れるまで、口内炎を舌先で突いたり優しく撫でたりを繰り返し、されるがままに弄り回される。

「あはは、涙目になってる。カワイイ」
「ひどいよ…可愛がってくれるんじゃなかったの」
「これからいっぱい可愛がるよ」

ちゅ、ちゅ、と子供のようなキスをしながら、十四松くんはブラウスのボタンを外し始めた。私も黄色いツナギのチャックを下ろして脱がせると、上は薄いTシャツ一枚になった。

「じゃあいくよー。先に気持ち良くなっちゃったほうが負けだかんね」
「そういうゲームなの」
「うん」
「それなら十四松くん、もう負けじゃない?」

私の視線はゆっくりと下に向いた。

「え」

ツナギの隙間から手を差し込み、下着を押し上げんばかりに膨らんだそれを撫でる。触れた瞬間ぴくんと反応して、更に硬くなったように感じた。

「きもちくないの?」

ふるふると小動物のように縮こまる十四松くんに加虐心が膨れ上がってくる。触るだけだった手を扱くように形に沿って動かすと、う、と小さな呻き声があがった。

「ナマエちゃん、俺がいっつも使ってるエロ本読んだりするんだもん、ずるいよ」

私があの雑誌を読んだのがいけなかったらしい。十四松くんのスイッチは私の気づかぬところで入ってしまうから、油断ならない。

「そんなの興奮しないわけない」
「淫乱ナースねぇ」
「うぁ」
「今度ナース服着てあげようか」
「や、やめ…出ちゃう、」

言葉に合わせて動きを速めると、手の中のモノがびくりと大きく痙攣した。先っぽを手の平で押さえようとしたら、十四松くんが私のうなじを掴んだ。

「くち、あけて」

喉の奥まで捻じ込まれたそれは口の中以上に熱くて、火傷してしまうんじゃないかと思った。すぐにぱんぱんに詰まっていたものが一気に吹き出して、口の中を汚した。
ちゃんと中に残ってる分も吸い出してあげて綺麗に舐める取ると、十四松くんはやっと満足そうに笑った。

「ちゃんとごっくんしてね」
「う…」
「ミョウジさーん、お薬の時間ですよー」

少年のようなきらきらの笑顔とは裏腹にわりと本気の力で口を押さえられたので、もう飲み込むしかない。視線で抵抗してみたけど、だめだった。無言で頷かれる。
ゲームには勝ったはずなのに、全然勝った気がしない。勝者に対してこの扱いはどうなんだ。
私の喉が上下に動いて、口の中のものを飲み下したのがわかるとやっと口を押さえていた手を解放してくれた。二度、三度と優しく頭を撫でられる。

「口内炎、早く治るといいね」

全くどの口が言うのか。


160308
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -