「ちゃんと仕事もやってもらわなきゃ、困るよ…っふ、はぁ」

深夜の本丸は静かだ。ただ一室、審神者である私の部屋を除いては。

「文句言いながら結局最後までするくせに」
「途中で止められるものでもないんだよ。…男って厄介だよね」

古くなった畳がぎしぎしと軋む。床の上でも、燭台切は私に説教ばかりしていた。

「っん…これで君のやる気が出るなら、幾らでも付き合うけどさ。審神者としての自覚を、ちゃんと持たなきゃ」
「んん…」
「なにも夜伽をするためにこの体があるわけじゃないんだ…っく」

口では咎めながらも、手はいやらしく胸元を這い回り、忙しなく振る腰も止まる気配はない。
わざらしく大きな声を上げると、燭台切は慌てて私の口を手で覆った。「隣に聞こえたらどうするの」あくまでも自分は主命に仕方なく従っている体を取りたいらしい。でも、にやついた顔が隠しきれてないぞ。
私は「出来た主」だから彼の体裁を守ってあげるため、いつだってダメな主人を演じてあげるのだ。決して自分の欲求のためだけじゃない。決して。

「主…、出すよ」
「え、だめ。我慢して」
「っく…は……ご、ごめん、出ちゃった…」
「あーあ」

私の中からずるりと出て行くと、不満げな私の顔と、今まで自分が入っていた所を見比べて申し訳なさそうに俯いた。

「ごめん……」
「早いのは格好良くないよ」
「そ、そうなの?!」

「格好良くない」が堪えたのか、燭台切は大きな背中を丸めていじけ始めた。素っ裸で体育座りしてるほうがよっぽど格好悪いと思うんだけど、これ以上追い討ちを掛ける趣味はないので、そっとボックスティッシュを差し出す。

「燭台切、ほら拭きなよ」
「…嫌だ」
「乾くと取れないよ」
「僕なんてどうせ格好悪いし」
「いや関係ないし」
「主も僕のこと格好悪いって思ってるんだ」
「そんなこと…」
「………」
「………」
「……ぐす」
「あーもう煩い!ほら、拭いてあげるからこっち向いて」
「あ、あるじぃ」

無理矢理こっちを向かせると、意外にも素直に脚を開いてされるがままになった。
半べその燭台切の後始末をしてあげながら、私は何してるんだろうと頭が冷えていくのを感じた。所謂賢者タイムというやつだろうか。
最初に燭台切を誘ったきっかけは、私相手に本気になったりしそうもなく、後腐れがないと判断したからだ。あと、そういうのが上手そう、という勝手なイメージで。関係を持って初めてこんなに面倒な性格だと知った。別に知りたくなかった。

「主、明日も朝から出陣だからね。ちゃんと指揮とるんだよ」

泣き止んだ燭台切が、お兄さんみたいな顔をして言った。主人に股間を拭ってもらいながら、である。
誘う相手を間違ったことは私だって薄々気づいてる。



150429
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テーマ「人外ファンタジー」
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