「時間は大丈夫なのか」
「うん、まだ平気。終電で帰るし」

東堂の一人暮らしの家から私の家は電車を何度か乗り替えなくてはいけない。おうちデートは好きだけど、帰ることを考えると少し面倒だ。ちなみに、まだお泊りをしたことはない。恥ずかしながら。付き合って二ヶ月とじゅうななにち。メディアで騒いでる統計は当てにならないし、大学生の平均とか知らないけど、私は身を持って、そろそろなんじゃない?と感じていた。

この東堂尽八という男、出会ったときこそその自信満々な態度と大勢の取り巻きで他を圧倒していたが、付き合ってみるとなんてことない、むしろ恋愛対象としてだけみれば、全くにつまらない男だった。
初デートは水族館だった。綺麗な熱帯魚を見ながらしっとりと大人なデートを期待していた。が、違った。気づいたらちびっ子に混ざって全力でヒトデを触っていた。わー!裏側気持ち悪い!うっわ動いた!動いた!と叫んでふれあいコーナーの飼育員に白い目で見られたのが懐かしい。帰りにキスのひとつでもあるかと思ったのにそれすらなく、いつもファンの女の子に向けるのとおんなじ顔で「また明日」と言われた。

「東堂」
「どうした」
「わかんない?」
「……」

私が首を傾げると、東堂はぎこちなく頬に触れ、ぎゅっと唇をくっつけてきた。柔らかな幸福感に包まれてうっとりするのも束の間、すぐに唇が離れていく。
毎回思うんだけど、キスのバリエーションないわけ。

「…帰ろうかなぁ」
「そうか!送るぞ」
「違うでしょ」

東堂は意味がわからないという顔をしている。むかつく。
部屋着の襟を掴んで、ぐい、と引き寄せた。もっと意味がわからないという顔になった。そのぽかんと開いた口に、できるだけいやらしく、舌を捻じ込んだ。東堂の目がくるくる動いてる。

「っはぁ」
「ナマエ、お前、何…」

東堂は後ずさって、距離を取ろうとする。そうはさせないと脚の間に滑り込んだ。

「なんだ。たってるじゃん」

興味ないわけじゃないのね。





140524
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