珍しくナマエちんより先に目を覚ました。俺が起きるとだいたいナマエちんは起きてるし、酷いときだと朝食の準備を始めてたりするから、隣ですやすや眠る姿は滅多に見られない。明るいところで改めて見ると、真っ白いシーツに包まれたナマエちんはすごく美味しそうだった。長い睫毛は朝日で影を作って、柔らかな頬はほんのり紅く色付いている。
そういえばクラスの女子が言ってた。女の子は腕枕に憧れるらしい。いっつも終わったらさっさと寝ちゃうから、ピロートークなんてしたことなかったんだけど。ナマエちんも腕枕したら喜ぶのかな。
そーっと、決して起こさないように、頭の下に腕を差し入れる。腕枕する?ってわざわざ聞くのもこっ恥ずかしいし。できれば寝てる間に。さりげなく。

「ん…」
「!」

ナマエちんが身を捩った。ちょっとびっくりしたけど、まだ起きてはいないみたい。よかった。なんとか腕を滑り込ませて、俺の腕枕計画は無事成功を収めた。おめでとう俺。朝から頑張った。偉いぞ。頑張ったらお腹が空いてきた。そろそろ朝ごはん作ってほしい。あ、でも駄目だ。腕枕の状態でお喋りしないと、この計画は成功と言えない。

「…あつし」
「あ」

俺がもにゃもにゃと余計な事を考えてると、閉じていた筈の二つの目がこちらを見ていた。いつもより顔近いし、なんか、なんか。

「起きたの?」
「…起きたの」
「ふふ」

……恥ずかしい。

できればそんなに見ないでほしい。腕枕してることに対して何も言わないのも逆に羞恥心を煽られる。

「おはよう、あつし」
「…ん」
「今朝は何食べたい?」
「んーなんか甘いの」
「フレンチトーストだね」
「それ」

名前ちんは俺の髪を撫でると、よし、と言った。

「私起きるね。そろそろお腹空いたでしょ?」
「え」

名前ちんが早くも起き上がろうとしたので、俺は慌てて腕を引っ張った。

「だ、だめ!」
「だめ?」
「うん。だめ」
「…そっか。なら仕方ないなぁ」

再び腕に暖かい重み。長い髪の毛がくすぐったい。何を喋ったらいいのかわからなくて、腕枕してないほうの手で頭を撫でてみた。ナマエちんは猫みたいに目を細めて頬ずりする。くすぐったい。

「なんか今日の敦違う」
「えーどこが」
「んー、いつもはペットって感じなんだけど、今日は彼氏!って感じ」
「意味わかんないし」
「かっこいいよ。好き」
「あっそー」

興味ないフリして、俺は仰向けにごろんとなった。正直裸でそんなこと言われたらムラムラするし、今すぐにでも布団から覗く谷間に噛み付きたかったけど、またペットみたいと言われるから我慢した。
彼氏って大変なんだなぁと思った。もちろんやめるつもりなんて、毛頭ないけど。



140330
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