私と巻島くんが仲良くなるまでは、それはそれは長い時間がかかった。なぜって、彼は目を見て喋ってくれないから。最初は私、嫌われてれるんだと思ってた。話しかけても曖昧な返事しかくれないし、すぐに会話を終わらせようとするし。だから告白をされたときは、何かの間違いだと思った。
告白の言葉は「ミョウジは、そのー・・お、俺にすればいいんじゃない・・・かなぁ?」だった。正直意味わかんなかった。
「なに見てるっしょ」
なんでこんなの好きになっちゃったかなぁと思って。言わないけど。
「なんでもないよ」
「 ・・・ふぅん」
巻島くんは興味無さそうに目を細めると、首を傾けた。無駄に長い髪が頬に落ちてきて視界が暗くなる。かさかさの薄い唇が、リップで潤った私のとくっついた。
「あ」
「なに」
至近距離で当たる息がくすぐったい。
「失敗したわ」
失敗?どこが失敗?今のキスが失敗なら、今までの全部失敗だよ。
たしかにちょっと歯茎当たって痛かったけどさ。
「・・・」
「ふふ」
巻島くんは頬をぽりぽり掻いて、私から少し離れた。キスした後にする、この決まり悪そうな顔が私は好きだったりする。
「いつになっても上手くならないね、キス」
更に言うなら、黙って見つめたからって必ずしもキスを待ってるわけじゃないんだよ。
「私がお手本見せたげる」
「え、おい、待っ・・」
慌てた顔も、大好きだ。
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