沖田くんは、私に優しい。私がいじめられたときはいじめっ子をやっつけてくれたし、困ったときは私が何も言わなくても助けてくれた。
周りの子たちは沖田くんのことを意地悪だとか冷たいとか言うけど、私は沖田くんに意地悪をされたことなんてなかったし、冷たい態度を取られたこともなかった。
だから今回も私の願いを叶えてくれるって、信じて疑わなかった。

「どうしてだめなの?」

私は仰向けに横になった沖田くんの上に跨っていた。シャツのボタンは半分くらい外れていて、肌が見えている。

「どうしてって…お前なぁ」

沖田くんは呆れた顔をした。沖田くんのこの顔は、よく見ていた。私が困ったお願いをしたときとか、言うことを聞かなかったとき、いつもこの顔になった。でも、最後には必ず「しょうがねぇな」って言って私の頭をぽんぽん叩いて、お願いを聞いてくれるんだ。

「いいでしょ?」
「自分が何言ってんのかわかってんのかよ」
「わかってるよ」

身をよじる度、シャツがめくれてお腹がちらちらと見える。上から眺める景色は、私をすごくわくわくさせた。



沖田くんと、セックスしたい



これが、私のお願い。
でも沖田くんはいつもみたく「しょうがねぇな」って言って、頭をぽんぽんしてくれなかった。

「ねぇ、なんでだめなの?」

駄々をこねるみたいにシャツの裾をぎゅっと掴んだ。沖田くんに優しくしてもらえないと、私はだめになっちゃうよ。
さっきからずっと黙ってた沖田くんが、私の言葉で起き上がった。膝の間にすとんと収まって、目の前にきた沖田くんの顔をじっと見つめた。私が待っている言葉を、早く聞きたくて。でも、

「だってお前、俺のこと好きじゃねぇだろ」

やっと口を開いたかと思うと、沖田くんは今にも泣きそうな顔をした。こんな顔、初めて見た。

「好き、だよ?」

そう言って私は胸に抱き着いた。こんなにくっつくのは幼稚園以来かもしれない。

「お前の好きは、違うよ」

違うって、じゃあどの好き?
心臓がどくんどくん聞こえる。栗色の髪からのぞく耳は真っ赤に染まって。


もしかして沖田くんは、私のことが好きなのかもしれない。




131020
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