部屋に備え付けのユニットバスでゆっくりとお風呂を楽しんでいると、部屋のドアが乱暴に開く音がした。続いて浴室にどんどん近づいてくる足音。

「ナマエ、こんなとこにいた」
「げ、団長なに入ってきてんですか!」

浴室のドアが開き、シャワーカーテンから団長が顔を出した。

「急にいなくなるんだもん」
「言ったじゃないですか。お風呂入ってくるって」
「俺聞いてないけど」
「言いましたー。団長食べるのに夢中で気づかなかったんですよ」
「…まぁいいや。寒いから入る」

一度カーテンを閉めたかと思うと、次開いたときには服を全て脱いだ団長が堂々と表れた。突然のことすぎて頭がついていかないが、ばっちり見た。見てしまった。
団長ってば意外と…げふんげふん。

面食らっている私などお構いなしの団長は、どぼーん、と豪快に浴槽に飛び込むと私と向かい合うように座った。
狭い浴槽の中でお互いの足がぶつかったので、私は少し縮こまる。

「食事抜け出してきたんですか」
「んーん、ちゃんと全部食べてきたよ」
「…そうですか」

団長の全部というのは、厨房にあった食材全部、ということなんだろう。食堂のおばちゃん大変だなぁ、第七師団なんかの担当になって。

「なんでここまで追い掛けてきてんですか 。淋しがり屋ですか」
「だって誰もいないのつまんないんだもん」
「阿伏兎さんいましたよね」
「おっさん一人いてどうすんのさ」
「私がいても何もないと思いますけども…」
「俺、ナマエいないとヤなんだよ」
「わー光栄ですーほんとですかー」
「ねぇ喧嘩売ってる?」
「め、滅相もない!」

お湯の中で団長が私の足を踏みつけてきた。水面が静かに波立つ。
私も対抗しようとしたが向こうが力を強めてくればぴくりとも動かせない。団長は水中戦でも強かった。

「割と本気で痛いです、団長」
「ねぇそろそろあがらないの。俺飽きてきた」
「人の足踏みながら飽きたはないでしょう」
「あがろうよう」
「だめです。まだ顔洗ってないし」
「えー」
「ほら、団長もどうですか」

洗顔フォームのボトルを見せると、ポンプ式のボトルからもくもく出てくる泡に興味を持ってくれたようだ。近づけてきた顔に泡を付けてやると、「なにこれ」と言いながら鼻の頭の泡をつんつんする。その仕草が小さい子供みたいで可愛い。

「これ舐めたら甘い?」
「…苦いと思いますよ。そして舐めちゃだめです」
「えーぜったいお菓子みたいな味し……ぅっ」
「だから舐めるなって…」

鼻に泡を付けたままの団長が顔をしかめた。
シャワーを差し出すと目をつむって顔を突き出してきたので、仕方なく泡を流してやった、けど、だけど、なんだこれ。普通のカップルじゃん。

「…私達って付き合ってましたっけ」
「付き合ってないね。全然」

顔を洗い終わって、二人してまた向かい合うように座り直す。やっぱりこの浴槽は二人で入るには、ちょっと狭い。

「でも団長って私のこと好きですよね」
「えー?俺そうゆうのわかんない」
「ふ、恋愛に関してはまだまだお子さまってことですか」
「あ、今のむかついた。罰として俺の髪洗って」
「えぇー」
「いいから ハイ、これで」

団長が差し出したボトルを見て、しばし、沈黙。

「…団長、これボディーソープです」
「えっ」








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