「今年入って何回目?」
「……」
「5回くらい?」
「そっ、そこまでじゃねぇよ!」
「あっそう。これは失礼」
「……4回だよ」
「変わんなくない?」
「俺にとっちゃ大きな違いです!」

山崎がまた振られたらしい。
もうすぐクリスマスだってのに気の毒な奴。しかし、もうすぐクリスマスだってのに振られる相手すら居ない私は一体何なんだろうか。ちょっと考えたくない。

「だから私にすれば良いのに」
「…うん、それ俺も思ってた」
「え、まじで」
「まじで」
「何言ってんのよ山崎のくせに」
「ナマエから言いだしたんじゃん」
「私のは冗談だよ」
「えっ冗談だったの」

そっか冗談だったのかー、としょんぼりする山崎が可愛い。ほんとに可愛い。
私はもう嬉しくて飛び上がりそうだったけど、ぐっと我慢した。今まで散々待たされたんだから、少しくらいいじわるしてもバチは当たらないはず。

「俺さ、色んな子に目移りしてきたけど、結局いつもナマエのこと見てた気がするんだよね」
「…」
「ナマエは俺のこと好きになってくれないの」

赤い顔をして山崎が見つめてきた。
こいつがこんなキザなこと言うのは酔ってる証拠だ。たちの悪い酔っ払いめ。
大丈夫、全然なびいてなんかいないぞ。ちょっと格好良いかも、なんて断じて思ってない。思ってないぞ。

「……てゆうか、この時期に言われたんじゃ、クリスマス一人が嫌なだけなんだなって思うけど」
「あー…確かに。そうとしか見えないね」
「でしょ」
「…じゃあわかった。クリスマス終わったら付き合って」
「何それ」
「俺なりの誠意…?」
「じゃクリスマスまでは手出さないんだ」
「…そうなるね」
「終わったら?」
「……手、出したい。できれば」
「あんた本当正直ね」
「だからだめなのかな俺」
「そうだね」
「ひでぇ」

私がオーケーするって前提で話が進んでて癪に障ったけど、ここで意地を張っちゃ意味が無い。こんなやり取りを今まで何回繰り返してきたろう。その度に私が意地を張ったり、山崎が酔い潰れて覚えてなかったり。(このときは最低だった)
私たちは前に進まなければならない。だから私も自分に素直にならなきゃいけないんだよな。今の山崎みたいに。


「……いいよ、クリスマス終わったら手、出して」


私の一世一代の勇気に、山崎はぽかんとした顔をしていた。
さっきまで自信満々だったくせに、なによ。

「…そんなこと言われたら今すぐ出したくなっちゃうよ」

そう言うと机に突っ伏してうんうん唸りだした。理性と闘っているらしい。
その姿を見てたら胸の辺りがきゅっとなって、これが所謂胸キュンってやつか、と他人事のように感心してしまった。
堪らなくなって突っ伏したままの黒髪に手を伸ばした。少し硬くて、でもさらさらと心地好い。
すると頭を行き来する私の手に、もうひとつの手が重なった。

「…ナマエ」

顔だけこっちに向けて、私の手に指を絡めながら山崎が笑った。

「26日の夜、空けといてね」

どうしよう、私の方が先に辛抱効かなくなりそうだ。
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