見慣れない天井に、いつもと違う色を通して差し込んでくる朝日。
食器がかちゃかちゃ鳴る音を遠くに聞きながら、肌に直接触れるシーツの感触に、段々と意識が覚醒してくる。


「おはよう。起こしちゃったかしら?」
「ううん大丈夫」


台所から戻ってきた玲央は既に上下とも服を来ていて、ベッドの端に腰掛けると、持っていたマグカップを差し出してきた。
手渡されたのは、調度良い量のミルクと私好みのハチミツが入れられたコーヒー。
温度も猫舌の私に合わせて熱くもなく、かといってぬるくもない、飲みやすい温度に冷ましてある。


「…ありがとう」


朝から文句無しの玲央の気遣いに、どっちが彼女だかわからないな、と苦笑しながら、ちびちびとマグカップの中身を飲み進めた。


「もう大丈夫?」
「…なにが?」
「なにって…身体。もう平気?」
「!」
「昨夜つらそうだったから」


彼はいつも、涼しい顔で恥ずかしいことをさらりと言うのだ。
私はというと昨日あったことをまざまざと思い出してしまって、もう玲央の顔がまともに見れない。カフェインを摂取するよりも、今のでよっぽど目が冴えてしまった。


「ね、服取って」


ほんの少し前まで床に散乱してたはずの私の制服や下着は、ベッドから離れたチェストの上にたたんで置いてあった。本当に、彼はどこまで気が利くのだろう。


「だーめ、まだこのままでいいわよ」


このままって…まだ裸でいろってこと。
困惑する私などお構いなしで、玲央の長い指は私の乱れた髪を梳く。それがあまりに愛おしそうに触れるものだから、未だ裸でいることの羞恥も手伝って、体温が一気に上がっていくのを感じた。


「玲央、楽しんでるでしょ」


私がいちいち反応するから。


「どこがよー」
「なんか今日、いじわる」
「なに言ってるの。こんなに可愛がってあげてるじゃない」


赤くなってるであろう頬を隠したくて玲央の首元に顔を埋めると、それに応えるように、玲央が毛布の上から私を抱きしめた。
ずれた毛布からはみ出た脚が目に入って妙に生々しい。身をよじってみたけど、抱きしめる両手がさらに固く結ばれるだけだった。


「あー、困ったわね」
「…なにが」
「ナマエちゃんが可愛いから、学校行かせたくなくなっちゃいそう」


私の肩口に寄せられた唇が薄く開いて、かかる吐息に思わず身体が強張った。玲央の寝癖ひとつない細い髪の毛がぱらぱらと私の肌の上を滑る。

表情が伺えなくて、本気なのか冗談なのかはわからないけど。触れ合う体温の心地好さに、もう少しこのまま、と身を委ねた。




130326
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