※微GL表現が有ります

俺の好きな人には、恋人が居る。
その恋人は、俺たちの同業者で、俺から見ても魅力的だ。
綺麗な金髪、豊満な身体。セクシーという表現が最もよく似合う、俺の想い人と同じ性の人間。
つまり、女だ。
想い人――クニっちは、常に無表情だ。
どんなに凄惨な現場でも、酷い悪人を前にしても、眉ひとつ動かさない。全く感情を出さず、ただ冷静に、捜査を進める。
勿論、俺はそんなところも大好きなのだが。
しかし、クニっちは、恋人の唐之杜志恩の前では、雰囲気が柔らかくなる。
ときには愛おしそうに彼女を見つめ、ときには恍惚とした表情を彼女に向ける。
それが俺には、堪らなく苛つくものだった。
そんな感情を抱え始めて時が経ったある日、たまたま俺とクニっちが遅番で残った。
俺がいくら話しかけても興味を示さず、心が折れそうになった頃、クニっちが立ち上がった。

「どうしたの?」
「夜食」

察した。
だから、声をかけた。

「ここで食べればいいじゃん。一緒に」

見向きもしない。泣きてえよ、くそ。

「ねーえ、クニっち」

やっぱり無反応。どんどん進んじゃって、彼女はもうドアの前だった。
咄嗟に、叫んだ。

「弥生ちゃん!」

足が止まった。振り向きはしなかったけれど。
もう、何がなんでも、彼女を引き留めたかった。

「あいつのところに、行くんだろ?」
「……ええ」
「そんな不毛な愛、止めにしない?」

クニっちが振り向いた。
怒りの籠もった瞳で、俺を睨んでいる。
形の良い唇が開く。

「……貴方に言われる筋合いは無いわ」

怒気の含まれた声で一言そう言って、クニっちは出て行った。

「……俺にしなよ」

誰も居なくなった暗い部屋に、俺の独り言だけが、浮かんでは消える。

「ていうか、俺にしてよ。頼むからさあ……っ」

目が潤んだと思ったら、室内が霞んだ。
超格好悪いなあ、俺。

僕をみて

(こっちを向いて)


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