小柄な女である。
手足は細い。手首など、俺が掴んで引っ張ると、折れてしまいそうだ。その細腕でガンガン銃をぶっ放すものだから、見ている方は気が気でない。
頭も小さい。俺の片手で握り潰せそうなくらいだ。しかし、その小さな脳みその回転は速く、俺との会話はテンポよく進む。
――と、まあ、その小さな女の誕生日が今日だ、と、そいつのお仲間が俺に伝えに来た。

「……で?それを俺に、どうしろっつってんだ?」
「んもう!分かんない男っスねえ!」

パー子、改め花澤は、唇を尖らせ地団駄を踏んだ。
その横に立つ神崎のアホなニヤニヤ顔に腹が立つ。殴りたい。

「プレゼント!あげてほしいんスよー!」
「……まあ、やるつもりでは居るが」
「マジスか!?」

わーい、と目を輝かせ、くるくる回りながら去って行く花澤と、それをゆっくり追って歩く神崎。てかあいつ、なんで居たんだ。
それはさておき、誕生日の話である。
先ほど花澤にはああ言ったが、プレゼントは用意してある。あとは渡すだけ、だが、当の本人が――。

「姫川先輩」
「おわっ!?」

居た。後ろに。小さすぎて見えなかったのか?いやいやそんなはず無いだろ。

「……谷村」
「由加ちーが。姫川先輩が呼んでるって」

適当なこと言いやがって。いや、これはこれで好都合か。

「お前、このあと暇か」
「外せないような用事は特に。無いですけど」
「よし。晩飯、食いに行くぞ」
「……は?」
「ああ、その前に着替えて来い。車を待たせてある。中にドレスの入った箱があるから」
「ひ、姫川先輩?何を言ってるんですか?」

慌てる谷村を横目に、教室の戸を開ける。そこで、谷村に振り向いた。

「ハッピーバースデー、プリンセス」

臭かったか、と思いつつ右手を差し出すと、谷村は頬を染めながら、おずおずと小さな右手を乗せた。

さあ、参りましょう

(小さなお姫さま)

2012.1107 HappyBirthday


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