世間的には、文化の日で、ただの祝日。
私の場合は、それプラス誕生日である。
今朝からたくさん、お祝いメールが届いている。ゆまっち、とぐぴょん、杏里ちゃん、みかプー、紀田君、エトセトラ。
けれど。
しかし。
一番、欲しい人からの言葉が、まだ、無い。
今日はたまたまみんなが忙しくて、集まることが出来なかった。プレゼント渡せず申し訳ない、という旨がゆまっちや渡草っちのメールに書かれていた。別に、メッセージだけで、私は十分に嬉しいのだ。
だから。

「だから、早く」

外はもう、すっかり闇に溶けている。私は部屋で、独り呟いた。

「早く、言葉を頂戴よ」

膝を抱え込んで座ると、まとめていない髪が、はらりと顔の横に落ちる。
なんだか苦しくて、じわりと眼が潤んだ。
そのとき、インターホンが鳴った。
先日ネットで注文したグッズとDVDが届いたのだろう。それを観れば、少しは気分が明るくなるかもしれない。

「はーい」

声のトーンを上げて返事をし、相手をろくに確かめもせずにドアを開けた。
そこに居た人物を見て、思わず驚きが、唇からこぼれた。

「……嘘」
「何がだ」

呆れたように軽く笑うその人は、私が今日一日、会いたくて会いたくて仕方がなかった彼。

「何、って……え、ちょっと、どうしたの?」
「どうした、と言われてもな」

ドタチンは、作業着姿だった。心なしか、少々息が乱れているように見える。
仕事終わりに、急いで会いに来てくれたのだろうか。

「誕生日だろ。ほら」

差し出された大きな手のひらには、綺麗にラッピングされた小ぶりの箱。

「それ買うの、結構勇気いったんだからな」

箱を手に取った私に一言かける。何が入っているのかと首を傾げていたら、急に腕を引っ張られた。

「わっ……」

次の瞬間には、彼の腕の中だった。

「ど、ドタチン?」
「誕生日おめでとう」

あたたかくて心地よくて、ゆっくり瞼を下ろし、大きな身体に身を委ねた。

ちなみに、箱の中身は、指輪だった。ピンキーリングだったから、薬指には嵌められなかったけれど。

あなたの言葉ひとつで私は満たされるから

(ただそれだけで)
(幸せよ)

2012.1103 HappyBirthday


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