練習を終えて寮に帰ると、自分宛ての荷物が届いていたが、紫原は特に驚きもせず、淡々と段ボール箱を一つ部屋に運んだ。
この時期になると秋田は寒くて、部屋の冷えた空気に大きな身体を震わせながら箱を床に下ろし、自分も座る。
差出人は『赤司征十郎』となっているが、住所は東京であった。赤司は京都の高校に進学しているので、紫原は首を傾げた。
考えていても仕方がないので、鞄から飴を取り出し、包み紙を取って咥えた。チームメイトに貰ったものである。
ここまで考えて、紫原は、はたと気がついた。
そういえば今日は、自分の誕生日である。
なんとなく中身には察しがつくが、乱暴にガムテープを剥がす。
蓋を開けると、まず一番上にシンプルながら可愛らしい封筒。その下には、様々なお菓子が少しの隙間も無駄にせず詰められていた。

「おぉ……」

思わず歓声を上げた紫原の眼がきらきら輝く。
一つ一つ確認しながら取り出していくと、一般的なお菓子に加え、京都の銘菓が沢山と、何故か黒焦げのクッキーが。
口の中で飴を転がし、封筒から便箋を取り出す。六枚の色違いの便箋が綺麗に折り重なっていた。
わざわざ色を揃えたのか、と紫原は口の端を上げて笑った。
一番上、薄紅の便箋。細い筆ペンの達筆で、祝いの言葉と近況報告。
二番目、薄緑の便箋。こちらも生真面目な達筆で、祝いの言葉と遠回しにこちらを気遣う文面。
三番目、薄黄の便箋。顔文字や記号を大量に使用した祝いの言葉と思い出語り。
四番目、薄藍の便箋。お世辞にも上手いとは言えない文字で、素っ気ない祝いの言葉。
五番目、薄桃の便箋。少々丸みのある文字で、祝いの言葉と細かい近況報告、気遣い(と、クッキー作りました、という一文)。
最後、空色の便箋。小さな文字で祝いの言葉と、周囲の友人の様子。
薄紅と薄桃の便箋から考えるに、京都から送られてきたお菓子を東京でまとめて詰め、住所は東京、名前は元キャプテンで出した、ということのようだ。
そして、誰一人、バスケについて触れていないという些細な気遣いが、紫原にはとても嬉しかった。
もう一度手紙を読み返しながら、紫原は呟いた。

「ありがと」



(あまい、あまい)
(おくりもの)

2012.1009 HappyBirthday


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