彼が、長い髪の女の子が好きと、そう言ったあの日、私は結っていた髪をほどいた。
それから、髪を伸ばし始めた。
初めは少し邪魔に感じたけれど、だんだん気にならなくなった。
何よりも、髪が伸びたと実感するたび、彼の好みの女の子に近づいているのだと思えて、嬉しかった。

彼が、悲しい顔をして、居なくなったあの日、私は一日だけ髪を結んだ。
誰も、気に留めなかった。
ただ一人、幼なじみの青い瞳だけが、ほんの少しだけ見開かれた。

彼を青空のような爽やかな蒼とするなら、幼なじみは海のような深い青だった。
澄んでいた二つのあおは、美しく調和して、私の目には輝いて映った。
しかしそれはいつからか、暗く淀んでいたのだ。

彼が進学する高校が、どこなのか知った。
その頃にはもう、幼なじみが進学する高校が、決まっていた。
迷った。
散々、迷った。
そして私は、幼なじみと同じ高校に進学した。
沈んでしまった青が、心配だったからだ。

大会で、彼の学校との対戦が決まった。
いつか来るだろうと、覚悟はしていた。
はずなのに、思っていたよりも辛かった。
でも、だからこそ、手を抜いたら駄目だと思った。

久しぶりに会った彼の瞳は昔のように澄んでいた。
まだバスケを好きで居てくれた。
幼なじみを、昔のように戻すと約束してくれた。

あの言葉を信じて、私は今日、ベンチに座る。
彼が、幼なじみとするバスケが好きだと判った今、私はやっぱり、本気にならないといけない。
愛する人と敵同士なんて、よく出来た悲劇のよう。
けれど私は、ただ嘆くヒロインにはならない。

蒼色ロミオ桃色ジュリエット

(悲劇を変えられるのは)
(私たち自身だ)


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