虫酸が走る。
見ていると腹が立つ。というか、見たくなくても目についてしまう。
自重しろと一言。ただそれだけ言うことが出来れば、随分と楽になる。
しかし、奴らは気づかれていないと思っている。
だから、言えない。
「狡噛さん、お昼っていつ食べますか?」
「あー……まだだな。も少し、頑張れ」
「はいっ」
そうか。今日も一緒に食べるのか。
何処でだ?屋上か?ここでは食べるなよ頼むから。
これだけ堂々とやりとりをしておいて、よく知られていないと思えるものだ。
見てみろ。征陸、滕、六合塚。全員が全員、見えぬ聞こえぬ知らぬを通して……おいこら貴様ら。何をこっそり見ている。
「駄目だ、常守」
「はい?」
「集中力が保たん。昼飯にしよう」
「分かりましたっ」
席を立ち、部屋を出ようとする。
待て。ここは貴様らだけの空間では無いぞ。
何か言うことが――。
「あ」
思いだしたように、扉の前でこちらを振り向く。
「昼飯食って来る」
「あ、同じくです」
有ろうことか、俺が返事をする前に出て行った。
……あいつらは、俺を何だと思っているんだ。
「行っちゃったねー」
「恒例行事ね」
楽しそうに、面白そうに、滕と六合塚は、あの二人を見守っている。
「おーい、顔が怖いぞ、宜野座監視官」
「……黙れ」
くそ、ニヤニヤと笑いやがって。楽しんでいないで助けろ、馬鹿野郎。
「あれだけ堂々として、私たちが知らないと思っているんでしょ?」
「どうだか。見せつけてるようにしか見えないよ、俺には」
いつもの俺なら、私語は慎めと一喝している。
しかし、俺のストレスはもう限界値に近い。怒鳴ることによって、更に溜めることは避けたい。
「ギノさん大丈夫っすか?最近顔色悪いっすよ」
「……気にするな」
「キツそうですね」
……楽しんでやがる。
いや、俺が疑心暗鬼になっているだけなのか。
「ギノさんも作ったらどうっすか。恋人」
「……要らん」
けらけら笑う滕。
確信した。俺は、明日倒れるだろう。
無論、ストレスが原因で。
生真面目さんの苦悩
(その背景には)
(優しさが有るのです)