授業
「お、ちゃんとやってきたのか宿題」
「とーぜん。私が忘れる訳ないでしょー」
よく言うぜ、と呆れる先生。
伊東くんを見ると目が合ったのでにっと笑っって小さくVサインを送るとため息をつかれた。あれ、なんで?
「……ほーう」
「なんですか先生何か文句でも?」
「これよく見たらお前の字じゃねぇな」
「ぎくうっ、ばれちゃいましたか!」
「……ちょっと沖田くん茶々いれないでくんない、ややこしいから」
何がでィ、と沖田くん。いや文字じゃ伝わんないでしょ、って私はなんの話をしてんだか。
大体「ぎく」なんて擬音発する人間がどこにいんのさ。
「……はぁ、まあいい。お前に一々注意したって始まんないしな」
「わーい」
「そういやこの前先生のボラキノールの中身練り辛子にしてたのお前だったよな亜矢」
「ぎくうぅぅ!」
「よーし伊吹今からボックスでボラキノール買って来い、今すぐな」
「イヤだなぁ先生私がそんな事する訳ないじゃないですかぁ〜」
「気持ち悪い声出すな、不良娘」
「誰が不良娘だァァァ!!」
「反応するのそっちかよ!」
人の黒歴史を掘り返すからです。
「金髪にしてたとか天上天下唯我独尊ってTシャツ着てたとかか」
「ぎゃーやめてよ人の恥ずかしい過去を!!」
「先生、女の子に痔の薬買いに行かせるなんてセクハラもいいとこですよ?どこかのゴリラを思い出すわね」
「そーだよ妙ちゃんもっと言って」
「俺のは断じてセクハラじゃない!愛のあまり欲があふれて思わずスキンシップに出してしまっているだけだ!!志村さんも欲の裏返しとしてそれが暴力に変わってるんだよ!!ねぇ志村さん!!」
「さよならゴリラ」
「ぶごふ!!」
ダークマ……もとい卵焼きを思い切り口に突っ込んだよ妙ちゃん。絶対武器として有効だって知ってるよ。
「不摂生は万病の元と言いますし、先生も食べます?私の卵焼き。今日は上手く出来たんですよ」
「上手く出来たってなに?毒薬として?」
妙ちゃんが弁当箱を開いた途端むわぁっと何とも言えないにおいが教室に広がった。
「あれェ今急に俺治っちゃったみたいだわわりぃな志村くいたいのは山々なんだが!」
「まぁせっかく作ってきたというのに食事を無駄にするんですか。」
「食材無駄にしてんのはあんた!」
冷や汗を書いてる服部先生を後目に私はそろそろと教室をでようとすると。
ガチャン
首に違和感。
「………」
「よぉ、よく似合ってんじゃねェか。このまま散歩に行くかィ」
「空気読んでくれない沖田くん。今逃げようとしてたのに」
「まだ授業中だぜィ、風紀委員として逃がす訳にいかねェな」
「つかこれじゃ席戻れないし放してってば」
「おい総悟。それより近藤さん運ぶぞ。このままじゃ死んじまう」
「じゃあ一緒に連れて行きやす」
「さっき残らせようとしてた癖にこれかよ。ちょい桂くんなんとか言って」
「沖田殿。その際には手綱を俺に持たせてくれないか」
「こいつを虐めていいのは俺だけでィ」
「あんたら人のことなんだと思ってる訳!?」
キーンコーンカーンコーン
「はぁー終わった終わった」
「そういやツッコミメガネが居なかったな、今日」
「志村の料理を食べたんだろ、それより近藤さん運ぶぞ」
「よしじゃあ行け亜矢……ってあれ」
「……鎖切って逃げたな」
「……すげェ馬鹿力」
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