登校






神威の朝飯に無理矢理付き合わされ財布は殆どすっからかんになったが朝のまったりタイムを削って何とか普通に出て来れた。

ちなみに神威は喧嘩の為サボリ。相変わらず朝っぱらから物好きだ。(規則正しい不良だな)





「伊吹」

「あ、おはよう」





ぼうっと考え事をしながら廊下を歩く私に声をかけてきたのは同じクラスの土方くんだった。

隣に来た瞬間、くんっと何か苦い匂いが鼻をついた。……こいつ本当に風紀委員なんだろうか。

ともあれ、指摘する気はないのでいつも通りの会話を交わす。





「今日は校門に立たなくていいの?」

「チェックは伊東と山崎がやってる」

「へぇ…」





私は不明瞭な声を出して片眉を上げた。

それはまた奇妙な組み合わせだ。山崎くん気まずいだろうなぁ。




「つか沖田くんは?」


「アイツはさぼりだろ……そう言えば今日は早いな、おめー」

「銀八に酢昆布で釣られた神楽ちゃんにチョップで起こされたんだよ。凄く痛かったんだから。ちくしょー今に見てろ反面教師」

「自業自得だろ」






そんな話をぐだぐだしながら下駄箱で靴を履いていると何かが物凄い勢いで駆けてくる音がした。嫌な予感。





「亜矢ァァァ!!!」


「そうは行くかァァ!!」





くるりとそれを避けるとけたたましい音を立ててすっころぶ女の子。あれ?





「ひどいヨ亜矢!!何で私との愛の包容を避けるアルか!!やっぱりその男と浮気してるのね最低っ」

「なんで俺なんだよ」

「神楽ちゃん、最後だけ標準語になってるから」





ぐすぐすと泣き真似をしながら神楽ちゃんは地面から起き上がる。しかし避けていて良かったと思う。もしあのまま動かなかったらきっと一方的な包容で内臓が潰れていたであろう。私も成長していたものだ。





「亜矢!」

「ぎゃっ!?」





と思っていたら今度は肩を両手でがしりと捕まれた。また今朝と同じ悲鳴を上げる。





「憎いあんちきしょー達の所為で私は朝飯を食い逃してしまったヨ…!このままじゃ腹が減って死ぬアルお願いだから恵んでヨ!!」

「…え?」




聞けば神楽ちゃんは朝ご飯の時間を喧嘩に費やしてしまい、おまけに購買で買うにも喧嘩の時にお金をばらまけて無くしてしまったとか。だから購買で食べ物を買うお金をくれ、と。





「いや、君のお兄さんの所為で財布がすっからかんなんですけど」

「何で兄ちゃんには食べさして私にはなにもくれないアルか!!」

「いや、別にそういうつもりじゃあ…てか話聞いてる?」





私がたじろいでいると神楽ちゃんはハッと何か気づいた様な顔になった。





「もしかして…やっぱりデキてるのね!?私のお兄ちゃんと!!あんな不細工でどうしようもない男に――!!」


「ダッシュ(―)までつけてそれっぽい雰囲気出すな。つーか不細工ってアンタら同じ顔だろーがっ」





ごつん、と拳で頭をぶつと「痛いヨ」とふてくされた顔で此方を見上げてくる。全くこんな台詞何処で覚えて来たんだか。後で部屋にある女性週刊誌は隠しておこう、と密かに心に決める。

私たため息をついてポケットから小銭を取り出した。





「はい、コレ」

「……!くれるアルか!?」

「これで酢昆布でもメロンパンでも好きに買って来なさい」

「キャッホゥゥ!!さすが亜矢ネ!ありがとう姉御!」





ぱっと眩しい笑顔を浮かべて神楽ちゃんはまた物凄い勢いで走り去って行った。

殆ど黙って事態を見守っていた土方くんがつぶやく。





「お前も苦労するな…」


「わんぱくな子供を持った母親の気分だよ」


「つーかお前自分の昼飯代は?」

「……あ」





すっかり忘れてた。ぽかん、とする私を見てはぁ、と一つため息をつく。





「しょーがねェから俺の弁当分けてやるよ」

「そんなもん食う位なら死んだ方がマシです」

「あんだとコラ」

「だって土方くんの弁当殆ど真っ黄色じゃん」




ありがた迷惑だ。気持ちは嬉しいが。




「購買の焼きそばパンで手を打とう」

「なんで貰う側なのにそんな偉そうなんだよ」





そんな事言いながらも買う約束をしてくれる土方くんはいい人だと思いました。あれ、作文?









キーンコーンカーンコーン


「げっ、もうチャイム鳴ってんじゃん!」

「おめーがこんな所でもたもたしてるからだろ」

「なんでそんなに落ち着いてるの!?」











結局遅刻。


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