約束しました。
「………こ、これって」
見違えた。ホンットに見違えた。
流れるようなラインの綺麗な青色のドレス。それが動く度光を反射してキラキラと輝く。
胸には真珠のネックレス。髪は高く結い上げられきちんとセットされている。
顔も薄く化粧されている。肌はさらに白く綺麗に整い、目は潤み、一回り大きくなったようだ。
我ながら鏡に映ってる美女は誰かと思った。
「どーお?私の腕は。綺麗になったでしょう」
「すっごい……」
手下の天人、もとい私をコーディネートしたオカマを見た。
バツが一個ついている私ではあるが結婚式はあげたことがない。こんなに自分が綺麗になるなんて夢のようだ。
「……あれ、嬉しいけどなんでメイクアップ?」
「当たり前よ、今日のアンタは商品なんだから。少しでも綺麗にしてお客がつくようにしなくちゃ」
あ、なるほど。そういうことか。
……じゃない。綺麗にしてもらったのは嬉しいがこのまま素直に売られる気はさらさらない。
かと言ってこの洋館広そうだし――そうだ。
「……あの、ルカ――一緒にいた子供は」
「あの子はとびきりだからね、トリよ。あなたの後ね。男の子だからセットには時間かからないでしょうけど」
ほう。まぁ確かに、何処でも役に立ちそうな能力ではある。しかして私の方は地球人というだけでこれだけ価値がついたのだから、ある意味すごい。
でもルカくん、一体何処に……
「うわああっ!!」
「――!!」
ルカくんの声――隣の部屋か。
「ルカくん!」
「あ、ちょっと――」
オカマの制止が聞こえたが構わずドアを開けた。
「……あ」
そこにはセットを終えたらしいルカくんがいた。
タキシードできっきりと決めて、髪は心なしかさらさらになっている。
彼は目を見開いて、惚けたようにこちらを見ていた。
「おねえ……ちゃん?」
「そうだよ。無事だったんだ……」
ほっとして胸をなでおろす。全く手のかかるガキだよ、とかってオカマがため息をついてる。どうやらこちらもこいつにびびって声をあげたらしい。……あれ、オカマが二人?
「あたしらは双子なんだよ」
あ、そうですか。おすぎとピーコみたいな?いらん情報だったな。
「あんまり綺麗だから誰かわかんなかったよ、お姫様みたい」
「……そ、そう?」
照れかくしにへへ、と笑ってみる。すると、ルカくんは眩しそうに目を細めた。それは遠くを見るような仕草にも似ていた。
不思議に思って何かを言おうとしたその時。
「オイ、おまえの出番だ女」
そのときが来たようだった。
「ちょっと待って……」
目を伏せて言うと、好きにしろと臘月は外に出て行く。
私はルカくんを抱き寄せた。
「お、お姉ちゃん」
「待ってて、絶対――」
「――え」
囁いて私は踵を返した。
「……今すぐ帰っても勿体ないしねぇ」
お披露目くらいいいよねと舌を出す。ああ、どうもあのおさげバカの悪い癖がうつってしまったらしい。
「……ちょっと楽しみなんだよね」
闇オークションってのがどんなものか。
余裕こいてる場合じゃないのは分かってるけど、脱出はそれからでも遅くない。ちょっとした賭けだけど大丈夫、
絶対に君を助けるから。
(私にはバカな王子がついてんの。)