考えました。


一日経った。

私は与えられた自室の一室にいる。そして代わり映えのない外の景色をみながらひたすら考え事をしていた。




念願のトリップがかなった、のはまぁ嬉しいっちゃ嬉しいし、神威思ったよりいい男だし、阿伏兎さんもかっけぇし、それはまぁいいんだけど。




「もう満足したんで私の世界に帰してください」




しんとする部屋。まぁそうだよね。なんかさぁ、神様的なものが私を勝手にトリップさせたのかと思ってこんなこと言ってみたんだが。

これって私が満足してないと神様がお思いだからだろうか。変な男ばっかよこす癖にそんなところで気ぃ回してくれなくていいんだけど。万事屋や真選組一同に会いたいというこの願望が叶ったら帰れるだろうか。そしたら神様も満足ですかコノヤロー。




「よし、じゃあまずは此処で一肌脱いでこの身体で彼奴の欲望を満たしてやることだな!」

「やな言い方しないでくれる?」




まぁ頑張るのはいいけどさ、といつの間に入ってきたのか呟く神威。

怪訝に思いつつもなんだかこの子自分勝手そうだしな、と一人納得する。

てかうちの息子と同じ名前ってややこしいんだよ、かえてくんないかな。



「大体ねぇ、一緒にしないでくれる? うちの子はね、そりゃあもう天使のように愛らしい子なの。あんたなんて目じゃないの。たぶん年上にそんな口利くような奴とは大違いなの。

あんたなんて愛らしいの見た目だけじゃん、顔だけいいただの殺人鬼じゃん!」

「あんたがつけたんだろ名前。ていうかたぶん年上ってどういうこと」





いやだって君年齢公開されてないもの。そもそも銀さんだって年齢決まってないんだぞお前が決まってる訳ないだろコノヤロー




「まぁいいや。でも俺は殺すのが好きな訳じゃない。ただ闘うのが好きなだけだ」
「……さいですか」




私にとっちゃ大差ない。じゃあなんて呼べばいいんだ。息子と同じ名前で呼ぶのもしゃくだし。




「じゃあ殺人鬼(笑)」
「なにその気持ち悪い呼び方、おちょくってるの」

「あんた私が異世界からやってきたって言ったらどうする?」




彼は目を見開いた。いつもの笑顔と違ってなんだか急に幼く見えるんだから不思議だ。





「……真面目に言ってるの、あんた」
「大まじめですよ。こんな嘘ついてどーすんの」





はぁ、とため息を吐く。


とりあえず言ってみたものの、信じるのかなこの人。てか信じてもらったところでなんの役にも立たなさそうだが。

でもトリップして最初に現れた人だ。何か意味はあると思う。どんな理屈かは分からないがもともとトリップなんて超常現象起こる時点で普通の理屈じゃないだろう。




「なら、ますます面白いね」と彼。




「なんだかわからないが神様が俺にくれたプレゼント、か何かなのかな。君がどんな力を持ってるのかワクワクするネ」





似合わずロマンチックなことを言う子だ。

まぁ、そういうとこで人気キャラってのもあるのかな。あと顔。





「ご期待にそえるかどうかは別として、まぁがんばってみるよ」





それ以外生きる方法はなさそうだし。こいつと闘うのは絶対嫌だがまぁなんとか逃げよう。




「……ていうかあんた、ガキいたの」

「え?」

「これ」




ぴらりと彼が取り上げたのは一枚の写真。

私の――息子の写真。




「ちょっ、返して!」
「あんたとそっくりだからすぐ分かったよ。性格もあんたに似てるのかな」
「いやぁ、私と違ってしっかりした子で――って違う!」




ばっとそれを取り返した。




「君の子なら可能性あるだろうし、将来が楽しみだね」

「いっとくけどこの子はあんたと違ってバトルジャンキーなんかじゃありませんー。すんごくいい子なんだから一緒にしないでね」

「でも俺と同じ名前なんだろ」





いやまぁそうなんだけどさ。あーあ、響きがなんかかっこいいし結構好きなキャラだしーってつけたのが大間違いだった。





「さっき必死になってたのもその子のことなんだろ」

「…………」





写真を見つめた。




「この子もこっちに来たら面白いのに」





ガシャン!






コップの割れる音。

かけらと水が彼の頭の上に被った。

下を向いてる為どんな顔をしているか分からない。




「……ふざけないでよ」




私の低い声に驚いたのか、彼が顔を上げた。




「いくらあんたが強くても、あの子を危険にさらすなら――容赦しない」






にらむと彼の目はさらに驚きに見開かれる。それが笑顔に変わった瞬間、


風が唸る。腹に響くような音とともに横の壁にどでかい穴があいた。



「―――ッ」



さぁっと血の気が引く。衝撃の余韻がビリビリと全身に響き渡る。

なんだ、こいつ。




更に口の端がつり上がって含み笑いが漏れたと思うとそれが大きな笑い声に変わる。



「あっはは! つくづく面白いね地球人って。いやこの場合母親、って言った方がいいのかな」

「………」

「気に入ったよ」




今度はにやりと、加虐的な笑みが浮かんだ。




「その様子がなければすぐにでも捨てようと思ってたんだけど、やめた」
「――は?」
「好物のオカズは最後にとっておくタイプなんだ」




おっと名台詞キタコレ。……いや、じゃなくて。




「どこか銀髪の侍に似てるね――楽しみだ」





そうやって笑った彼の顔は、最初出会った時の顔と同じだった。

ただ今度は――愉悦が感じられる、それだけが前と違っていた。






殺意の笑顔

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