「刹那さん」





自室で事務仕事をこなしていると山崎さんが声をかけて来た。





「なんでしょう」





年下なのに何故さん付けなのかと思いながら書類からは目を離さず返事をする。多分、追加の仕事(書類)だろう。また破壊行動を行ったのだろうか。

此処は警察の筈だが、あくまで冷静な刹那はすぐに「真選組は日常的に破壊行動を行っている」という事実を受け入れ、当たり前の様にそんな事を思った。



「思ったよりも早く届いてさ。着てみなよ」



微笑んだ山崎から差し出されたのは全く別の物であった。いつもと違うその言葉に刹那は振り返る。




「…隊服、ですか」

「うん。サイズはぴったりだと思うからさ」





黒一色の布地に金の刺繍が縁取られているそれを見て刹那は何か思うところがあるのかじっとそれを見つめる。

その傍らに添えられているのは隊長格の隊士の印の真っ白なスカーフ。

それに首を傾げて刹那は山崎の方へ顔を向ける。




「……私は副隊長ですよね。何故これが?」




その疑問に対し山崎は虚を突かれた様に瞬きした後、ははっと笑う。




「そりゃあ刹那さんは強いし、副っていっても隊長だからね」

「……」





今まで女というだけで突っぱねられて来た刹那にとっては、山崎の「当たり前だ」と言う口調が何か珍しい物に思えた。こんなにもあっさり受け入れてもらえたのか、という拍子抜けしたところもある。







「じゃあ、それ着てから副長室に来てね。」

「……?」

「大事な話があるんだってさ。俺も呼ばれてるから先行くね」





僅かに首を傾げた刹那に説明してから山崎はそそくさと去っていった。




なにも思い当たる節がない刹那はやはり不思議に思ったが、気にせずに新品の制服に袖を通した。









第四話


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