「よぉ、刹那ちゃんって言ったっけ?」
「……はい」
「酒は飲まねーのかい」
「何処にあるか分からないので」
「そーかそーか。なら今から外に飲みにいかねーか?勿論二人きりで……」
「オイお前抜け駆けすんなよお前!ってゆーか鏡さん、そんな奴より是非俺と今度食事にでも」
「お前ズルいぞ!なぁそんな奴より俺と番号を交換しようや」
「あ、それなら俺も!」
「……」
「何やってんだお前ら」
ドスの効いた声に鏡の周りに集っていた隊士達はびくりとした。
男らは恐る恐る振り返る前にガツン!と連続で頭に拳骨を食らう。
「「「痛ェェ!!」」」
「痛いに決まってんだろーが!何入ったばかりの新人を口説いてんだ。切腹になりたくなきゃさっさと散れ!!」
揃って声を上げた隊士達に一括すると、隊士達は渋々その場を離れていく。
酒臭い一団から解放された鏡は微かに息をついていた。
こいつの感情の機微は観察眼が鋭い奴でなければ殆ど分からないと思う。それぐらいに鏡の表情は読みとりにくい。
酒に酔った男共には迷惑がってるのが分からなかったんだろう。まぁ分かっていても迫っていたかもしれないが。
「気をつけろよ。そんな調子じゃ先が思いやられる」
「……すみません」
頭を下げる鏡に息を吐き、じゃあなと手を上げその場を去る。
「参加しないんですか」
「残した仕事がある」
それだけぶっきらぼうに答えてぴしゃりと戸を閉める。
隊士達の声で煩い広間から一歩出るといつも以上に屯所が静かに感じた。
「……何でもなきゃいいが」
これから読む報告書に思いを馳せ土方は密かにため息をついた。
第四話
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