「つかぬ事をお伺いしますが、真選組屯所は此方でよろしいでしょうか?」



いつもの様に屯所の庭にてミントンをしていると、珍しく女の人の声がした。




「あ、はい。そうですけど」




道を聞きたいのか、それとも女中志望か。そうだったらいいのになぁなどと考えながら返事をし振り返る。




「私、鏡 刹那と申します。此処へ勤めさせて頂きたく参りました。

局長様か副長様はいらっしゃいますか」





思わずぽかんと口を開けてラケットを落としてしまった。

その人は不思議に思ったのか、首を傾げた。





少し傾けただけでさらりと流れる黒髪。色白で、長い睫毛に縁取られた目は微かに潤み、しかし理知的な光を湛えている。

しかしその表情だけは凍てついた様に無表情で見る者に威圧感さえ感じさせた。


その表情もあいまって、まるで人形の様だ。こんなに綺麗な人は見たことがない。



ぼうっと見とれていると、形の良い唇がゆっくり開いた。






「…あの」


「えっ、あ、すみません!面接を受けに来た…んですよね?」


「はい」


「で、では中に案内します。ついてきてください」





女の子と話すなんて久しぶりだ。

少し緊張しながら副長室へと歩く。



大人しく隣を歩く…刹那さんって言ったっけ…を盗み見る。




長い髪を高い所で一つに結わえ、背筋はピンと伸ばし真っ直ぐ前を見据えている。


凛とし、気品のある佇まい。


もしかしたらいい所のお嬢様なのかもとちらりと思う。




「あの」


「はっはい?」




気がつけば彼女はこちらを見ていて俺は思わずうわずった声で返事をする。




「私の面接を担当される方は…どんな人なんですか?」


「…あ、ああ。基本的には副長が担当するんです。

"鬼の副長"なんて言われてるぐらいですから、見た目は怖いし厳しいけど、本当は案外優しい人なんですよ」





安心させようとそんな事を言うが彼女は「そうですか」と言ったきり何かを考え込む様にまた黙ってしまった。


緊張しているのだろうか。それとも…?








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