――嫌だな。
それが正直な気持ちだった。
部屋へ向かう足は自然と重くなる。
多少見た目がいいからと、借金のカタに親に売られてから数日。
そう日数は立っていない。しかし、この店がどういった所くらいかは分かっている。
実際に体のあちこちに痛々しい傷を作って帰ってくる人もいたし、先輩から聞いた話でも廃人や死人が出た事がある、という。
「女とヤれて金貰えるんだからいい仕事だろ」と割り切っている人もいるが、僕はどうにもそんな気にはなれない。
それに中には男の客もいるのだ。それを考えると嫌で堪らない。
「………」
ぎり、と唇を噛み締める。せめて、今日の客が女性でありますようにと願いながら外へ出ようとすると、受付の人に声をかけられた。
「よぉ、お前当たりだな」
「……はい?」
扉の前で立ち止まる。いつもいやらしい笑みを浮かべているこの人はやはり今もその笑みを浮かべていた。――前から思っていたが嫌だ、こいつ。
じろりとにらみやると男はそれに気づかなかったのか、そのまま無視して続けた。
「今日の客は女だ。しかも若くてすげぇ美人。俺が代わりてェぐれーよ」
「………」
だから、なんだと言うんだ。
そう思いながらも心の隅で少しほっとしている自分がいる。女の人――なら少しマシかな。
階段を登り、部屋の前につく。
「………はぁ」
それでも、気分は優れない。
――でも、逃げたって居場所なんかない
ほとんどヤケクソになって思い切りふすまを開けた。
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