「いやぁ、礼儀正しいし優しいし、いい子ですねぇ」
「そうだな」
俺の呟きに土方さんは興味なさそうに相槌を打ち、ガツガツと土方スペシャルをかき込む。
毎度の事ながらよく朝っぱらからそんな物を食べれるな…
何か胃からせり上がって来るのを感じて唸りながら口を押さえる。
「山崎」
「はい?」
慌てて口から手を離し返事をする。
「暫くあの女につけ」
「…え?」
一瞬、副長の言う意味が分からなかったが、すぐに気づいて目を瞬かせた。
「つけって…見張れって事ですか!?」
「声がでけーよ」
副長は若干声を低くして諫める。
幸い周りには人がおらずおばさんを除けば副長と俺の二人きりだったが。
俺も声を落とし抗議する。
「そんな事したら局長に怒られるんじゃないですか?」
「だからバレねーようにやれ」
「そんな…」
暫し絶句する俺をよそに、副長は刹那さんの去った方に視線をずらし続ける。
「念の為だ。怪しいとは思っちゃいねーがどうも身元がはっきりしねェからな」
嘘だ。本当に怪しいと思っていないなら見張りなんてつけない。
「でも」
「頼んだぞ」
否やは聞かないとでも言うように席から立ち上がると、副長は片手を上げて食堂を去った。
「……はぁ」
今日は厄日だ。
誰もいない食堂で俺の独り言は虚しく響いた。
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