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山崎さんは何故こんなにもよくしてくれるのだろう。
それがただ聖には申し訳なかった。本気で自分を心配してくれる事がわかったし、慣れない場に戸惑うに優しくしてくれる。
だからせめて賭けに参加し、もし勝ったらそのお金は山崎さんにあげようと思った。案の定勝ってあげた訳だけど後からなんてことをしたんだろうと思った。こんなずるい、方法で勝ったお金をあげるなんて。
でもそれを私が貰うのも憚られたから、渡した。山崎さんなら悪いことには使わないと思ったから。
でも戸惑っている所をみるとどうも大人がみんなお金が好きというわけじゃないらしいと悟った。
私の親は口を開けばお金のことか私を詰るかばかり言っていたし、ああいうことはいつもさせられていたから、せめてお返しになればと思ったのだけれど。
ため息を吐いた。外に出ると休みのためか人が多く、歩き慣れてない聖はしょっちゅう人にぶつかった。
すると足は自然と人のいない方に向く。いつの間にかうらぶれた路地の様なところに来てしまっていた。
「……あれ、」
此処、どこだろう。
江戸の街などしりもしない。迷ったのも同然だった。周りには人もおらずさぁっと血の気が引く。
不安からキョロキョロと周りを見渡すと少し遠くになにやら露天商の様なものが見えた。
助かった、人がいる――
「……あのー」
そろそろと近づいて行くと「なんだお嬢さん占いたいのか」と怪しげなサングラスのおじさんがこちらを見た。
「……あのそうじゃなくて、ですね」
「お嬢さんかわいいから初回はただにしてやる。だからひいてってお願いぃぃ!」
「………」
占い、と看板にはある。どうやらおじさんはくじの占いをやってるらしいが、思い切り場所が悪い。
「いやぁ今占いとかスピリチュアルとかはやってんじゃん。一発当てようかと思ったらさいいとこは思ったより場所代取るの高くてこんなとこでやってんのよ」と聞いてもいないのにおじさんは愚痴った。はぁ、と聖は困ったように曖昧に相槌を打つ。
お金を払わなくてもいいのなら引いてみようか、とくじに手を伸ばした。
「おーいあぶねーぞぃ」
「え」
ゆったりした声に振り向くと目の前にあったのはスクーター。
ガラガッシャーン、という音と共に占いの台がぺしゃんこにつぶれた。
「ぐぁあぁ!!俺の商売道具があああ!!」
「るせーなちょっと壊れただけじゃねぇか。それより俺のスクーターの方が深刻だよったく、ブレーキ直す金ねーんだからな俺には」
「またあんたか銀さん!!どうしてくれんだよコレよォォ!!」
知り合いらしい二人にぽかんと口を開ける部外者の聖。
「道具なんてなくたって占いは出来んだろ、でもスクーターがなきゃ俺は外にも出られねーんだぞ。考えても見ろ、スクーターが無かったら俺の財産はなにが残る」
「知るか!!弁償しろよ!」
「無職のおっさんに恵んでやる金なんざねェ」
「なんで俺が金せびったみたいになってんの!?なんも悪いことしてないよね!?」
「……あ、あの」
おろおろする聖にあ?とようやく存在に気づいたのか銀時が眉を顰めた。
「誰だこの娘」
「客だよ。あぁどうしようこのままじゃ商売上がったりじゃねーか」
「誰も通らないとこで商売してたらそら稼げるもんも稼げねーだろ」
「うるせェよ誰のせいだよ!あっ、そうだ嬢ちゃん」
「……え?」
いきなり話を振られビクつく聖に長谷川は頼む!とばかりに手をあわせた。
「言えに帰りゃ代わりの道具があるんだ!こいつに任せるのも忍びねぇし会ったのも何かの縁だ。ちょっとの間店番してくれ」
「わ、私がですか」
「頼んだ!」
答えもしないうちに長谷川は走り去った。ぽかんとする。「フツー通りすがりに店番頼むか?」と銀時がぼやいた。
「災難だなァ嬢ちゃん」
「………そ、そうですね」
災難の主の癖にそう平然と言ってのけるのが逆に清々しい程で聖は思わず頷いてしまった。
「で、あんた占い出来んの?道具もねーのに」
「……あ」
残ってるのは看板と銀時のスクーターだけである。
「出来ない……事もない……です、かね」
「なんだそりゃ」
怪訝そうにそう言われるが一応嘘は言ってない。ただ、
「未来の事は、分かりません……」
「あたりめーだろ、分かったらこちとら苦労してねっつの」
仕方ねーな、と銀時はスクーターを立ててそこに座り、台に掛けてあった紫の布をすっぽりと被った。
きょとんとする聖に銀時は言う。
「朝のブラック星座占いはかかさずいつも見てんだ、大丈夫だって」
「え、でも」
「こんなの適当に言っときゃいいんだろ、大体こんなとこにくんのは身元の怪しいやつくらい」
「すまぬ、カリスマ占い師の館は此処か」
「…………」
見えたのは青い着物をきた男の人。
驚き