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朝、雀がやっと鳴き始めた頃。まだ眠たげな雰囲気が漂う真選組屯所ではいつもの様に集会が行われていた。

広間には局長である近藤勲の朗々とした声が響き渡る。





「――これで報告は以上だ」





此処でいつもなら解散、と言って終了だが、今日はすぐにその台詞が出ない。土方が怪訝に思い見ると、近藤はいきなり立ち上がり廊下へ通じる襖を開け、その向こう側に向かって何かを話した。
よく見ると襖の向こうに小さな影が見える。

土方は眉を顰めた。記憶を検索するが新しい隊士が入ったという情報は無い。一体なんなんだ。

誰か新しい隊士でも入ったのだろうかと隊士達も些か不思議な顔をしながら近藤を見た。

すると少しの間を開けてその人物は出て来た。





それはまだ年端もいかぬ少女だった。近藤さんについて前に出るも、緊張しているのか華奢な体を縮こませ俯いていた。

呆気にとられて目を瞬かせる。小さい体、また世間ずれしていない事が伺える幼い顔立ち。その表情は今は不安一色にに彩られていた。

隊士達に困惑が広がるがそんな皆の様子を物ともせず、近藤はあっさりとこう言った。





「この子はお偉い方の娘さんでな、訳あって暫くここに預けて欲しいと頼まれたんだ。色々宜しく頼む。ほれ、自己紹介」





促されると少女は縮めていた肩をびくりと竦ませて恐る恐るといった感じで顔を上げた。すると視線が集まった事にまた怯えた様な表情になったが、「大丈夫だ」と近藤さんが言うとか細い声でとつとつと短い自己紹介をした。





「…さ、相良聖で、す…。よ、宜しくお願いします…」





それが少女、相良聖との出会いだった。






始まり




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