「よし、完璧」
最後、床の掃除を終えて立ち上がる。するとこれ見よがしなため息が同じ部屋の中から聞こえた。
「ふざけてないで続けたらどうだ、ユキ」
「ふざけてないしアンタにいちいち許可取ってたら終わらんでしょうが……って」
リヴァイに任せていた部屋半分を見て絶句した。ーーどこのプロがやったのかと思うくらいそこら中ピカピカに磨かれている。相変わらず奴は仏頂面言った。
「お前がもたもたしてると俺までとばっちりだ……とっととやれ」
「だから、終わったっつっただろ。あぁでもこれじゃ私が手抜きしたと思われる」
ギリギリと歯を食いしばり睨んでも奴はいつも通り無表情だった。畜生と毒づきながら掃除を再開。見てろ、お前が唸るくらい最後にはピカピカにしてやる。
今回の部屋の掃除は隣同士が確認する事になっている。
最近仲直りしたらしいとは言え、ハンジは少し心配していた。型に嵌らない者同士でよくぶつかっていた二人。優秀生同士故に喧嘩も凄まじく、その様子には教官でさえ顔を引きつらせる程だった。
お互い、教官にこってり絞られても喧嘩はやめなかった。二人があの荒んだ暗い目で立会い、まるで戦場さながらの殺気立った喧嘩の現場をハンジは一度見ているーーその様子を思い出し身震いした。もし喧嘩でもしてたら部屋もめちゃくちゃになっているだろうーー
ようやく二人の部屋につきこっそりと覗き込んだ。
「あれ、ここの全然取れない」
「なってないな、貸せ」
「いや良い、自分でやる」
「……」
「あ、無言で取るな……って一瞬で取れた?」
「むやみにタワシでやっても傷がつくだけだ、やり方を考えろ」
「む、ムカつく……。そうだ次は調理だったね。今度こそはアンタより完璧にやるから見てろ」
「出来るもんならな」
「ああ、やっぱりアンタムカつく……!」
「……リヴァイが誰かと仲良くしてるの初めて見たな」
そう睨み合う二人の目がいつしかとは和らいでいるのを見て、ハンジの顔は思わず綻んだ。
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リヴァイのお陰で掃除の腕は今でも完璧。色んな所で張り合っていたので二人共どんな雑務も完璧に出来る。リヴァイのおとがめなしに一回で清掃を完了出来るのはスノウだけ。