「リヴァイ。例の定期報告なんだけど……」

数人で手分けして庭の手入れをしている時だった。高い声が静かな庭に響いた。聞いた事のない声だったということと、兵長を呼び捨てにしている事が気になり、エレンは作業を進めながらちらと横目で盗み見る。

すると意外にも視線がかち合った。一瞬戸惑うエレンを他所に彼女はニッコリと笑う。

「君が例の新人さん?」
「はい」
「……おい、作業の邪魔をするな」

リヴァイが鷹の目で彼女を睨んだ。屈強な兵士でも飛び上がって怯えるその視線を彼女は微笑んで受け流し、つかつかとエレンに歩み寄って来た。それに何か言うかと思われたリヴァイは珍しく舌打ちをするのに留めていて、エレンは微かに目を見開いた。


「挨拶が遅れてごめんなさい。私はスノウ・ユリジア。分隊長よ。宜しくね」
「……宜しく、お願いします」

一瞬、らしくない外見に驚いた。兎の様な大きな瞳、整った眉、すっと通った鼻筋、柔らかそうな蜂蜜色の髪。

貴族の姫様のような、可憐な容姿だ。だけどその目にはこの場所では時折見て来たーー睨むだけで相手を射殺す程の鋭利な輝きがある様に見えた。じっとエレンが見つめているとスノウが首を傾げる。

「……うん?上官に見えない?はは、よく言われる。『あなたがあのスノウ・ユリジア?』ってね」
「いえ……そうは見えません」
「……本当に?」
「ええ」

笑いながらも、目が笑ってない。それが分かりながらエレンは迷いなく答えた。すると彼女はふうん、とエレンを睨め回し、満更でもなさそうに目を細める。

「悪くないねぇ」
「……気が済んだか?とっとと失せろ、ユキ」
「あーはいはい、もう行くって。じゃあまたね、エレン君」

リヴァイが言うとスノウは手をひらひらさせて去って行った。

「……ユキ」

聞き慣れない音が気になって反芻するとペトラがそばで囁く。

「愛称よ。兵長とスノウ分隊長は兵士になる前からの知り合いらしいの」
「……」

エレンがリヴァイを見る。一瞬ではあったが、リヴァイはスノウの去った方を見つめながら密かにため息をついていた。


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