1LDK、寝床は窓の側のベッド。暖かな色で包まれたそのベッドにもたれかかる。

ちら、と彼をみる。
彼は私の反対側で、さっきまで倒れていたのが嘘の様に手際良く自分の腕に包帯を巻いていた。

お茶でも出したほうがいいだろうか、と一瞬考えたが招かざる客にもてなしも何もないかとやめた。

ーー何故、私はこんなにのんびりした思考でいるのだろう。

珍しい自分の反応に内心で首を傾げる。

じっと彼を見つめた。

さらさらの黒髪に端正な顔立ち。黒の長ズボンに白のシャツ。そこにシルバーアクセサリーがキラリと光る。

ホストみたいな出で立ちだ。そのシャツに赤いシミがなければそう思える。しかしその模様でさえファッションの一部にも見えてしまう。何か、不思議な雰囲気を持っていた。

暴力団の下っ端か何かとも思ったがどうもその雰囲気とも違う。

「ありがとう」

救急箱の蓋を閉めるとにっこり笑う彼。頷くと本当にそれだけでスタスタと去ってしまう。ホッとしてるとあそうだ、とくるりと振り返った。

「今日あった事は誰にも言わないでね、分かってると思うけど」
「……」

ばたん、と扉の閉まる音。
あまりにもあっさりだったので暫し呆気にとられたが、警戒の必要がなくなった訳ではないので気を引き締めた。

ーーああいう手合いに無駄な好奇心は命取りだ。だからとっとと着替えて寝について忘れる事にした。都合の良い脳は多分本当に忘れるのでこれで何も問題はない筈だ。

何も。



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