「めりーくりすまーす」
寒い中身を縮こませ歩く私にそう挨拶したのは大量のティッシュを持った怪しさ満点の長髪のサンタだった。
「……何してんの桂さん」
「桂じゃないサンタだ」
「ティッシュしかプレゼント出来ないくせに何言ってんの」
半眼で睨むと横のエリザベスが〈バイト中なんです〉と書かれたプラカードを上げた。
いやそんな事は見れば分かるのだが。
「てかせっかくのクリスマスにバイトですか。攘夷志士は大変ですね」
「何をするにも金が必要だという事だ。国を建て直す為なら尚更な」
「とか言って単に一緒に過ごす人がいないだけじゃないの」
「………あ、そこの兄ちゃん店寄っていかない!?可愛い子一杯いるよ!!いやマジで」
「図星かい」
突っ込んでから嘆息する。この馬鹿は本当分かりやすい。
「何を言う。バイトが終わった後はエリザベスとパーチーの予定があるのだ。な、エリザベス」
どっちにしたって寂しい事に変わりはないじゃんか。謎の生物と二人(?)きりでクリスマスなんて。
エリザベスは当然オーケーすると思われたが〈いえ、今日はあいにく約束があるので〉という返事。桂さんはかなり驚いた表情をした。
「なっ、約束だと!?そんな事は聞いていないぞ!!」
〈すみません〉
宇宙生物に先越されてやんのー。
可笑しくて吹き出しそうになるのを堪えていると桂さんはむっとした表情になった。
「言っておくが他にも予定はあるぞ。本当だぞ。」
「へえ?何」
我ながらニヤニヤした声で聞き返すと桂さんはズビシと私を指さした。
「バイトの後、おぬしと二人でパーチーだ」
「………はい?」
思わず笑いもピタリと止まる。反射的に記憶を検索するがそんな予定は私にはない。
「あの、そんな約束した覚えないんですが?」
「当たり前だ。今言ったばかりだからな」
胸張ってに言う事じゃないでしょ。と思うのは私だけか。
「あのねぇ」
「手料理があると尚良い。ついでに作る時はフリフリのエプロンを「さり気に何のプレイさせようとしてんの馬鹿」
「いだだだだ」
思い切り頬を抓ってやると端麗な顔が情けなく歪む。ちょっとすっきりした所で手を離した。
「じゃあ私はこれで」
数歩歩いてからひらひらと手を振ると桂さんは苦い顔で片手を上げたので、今度は本当に吹き出してしまった。
「…ま、頑張って。ケーキ作って待ってるからさ」
にっと笑って言うと桂さんは一瞬置いて顔を明るくした。
プレゼントをもらったサンタクロース
(よしでは早速エプロンを)
(今夜は血のクリスマスになりそうね)
(すいませんでしたァァ!!)
-END-