バシュッ



ドコォン!!






轟音、飛び交う悲鳴、あちこちで響く金属音、木の弾ける音





お祭騒ぎで浮かれていた客の中にはこの騒ぎにも乗じる者も多く、自警団が加わったせいもありあっと言う間にこの場は戦場と化した。




その真ん中に佇む少女が正にそれを引き起こした張本人だとは仲間以外知るはずもなく、彼女はただ突っ立って目の前の光景を眺めていた。








悲鳴、血、雄叫び、炎、肌を這ってくるこの感覚――



それは私の気持ちをどうしようもなく奮い立たせる





思わず口の端がつり上がり、腕が疼く



だけど

それ以上に私を喜ばせるのは――




「まだ来ないのかしら…」





阿鼻叫喚な状況に目もくれずぐるりと首を回す。










「またテメェか」





待ち望んでいた声に私は胸中で歓喜し、それを隠そうともせず笑みを浮かべたまま後ろを振り返る。





「来てくれたのね」



「お前のために来た訳じゃねェ」





今日は珍しく私服なのか黒い着流しを纏っているその人は、瞳孔が開いたその目で私を睨んだ。


闇を溶かし込んだような黒は夜を照らす炎の紅さえ飲み込んでいるが、


その瞳にだけは――あちこちで燃え盛る炎のどれかが写り込んだかそれとも幻覚か――

小さく火が揺らめいているように見えた。






「ふふ、アナタに会う為にしているようなものなのに」


「ふざけんな、テメー自身が楽しんでるだけだろうが」





まぁそれもあるけど。





そう零してまだ飽きもせず笑みを浮かべたまま相手を眺め、どんなことを話そうかと思考を巡らせる。





「てめーなんぞとこんな所で時間を潰すつもりはねェ」





土方はすっと自らの刀を抜き、正眼に構え私を指す。





「なんだか段々話す時間が短くなってるなぁ」





少女はふてくされたように呟くも、土方と同じく己の刀を抜く。






「仲間が来る前に片付けてやる」


「もうちょっと時間かけて楽しむ事を覚えようよ……土方くん」


「――抜かせ!!」






それを合図に二人は叫び、

刀を構え、お互いに向かい走り出す。





男は戦意をたぎらせ

少女は真っ直ぐな殺意をその瞳に宿しながら















狂気の沙汰


こんな方法しか
知らないけど

アナタと束の間でも
逢瀬が叶うのなら

たとえ、
死ぬ事になろうとも








-end-
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