第三弾  佐かす編






「かーすが!」
「…………」
「かすがちゃーん?」
「………………」
「かすがー、返事してぇー」
「うるさい!!私はお前に構っている暇などない!!!」






 はいはい、上杉先生に渡すんですよね。
 分かってますよー、それが俺様に渡らないことくらい、ね。

 だからこそ無性に欲しくなるのが、男の本分っしょ?










 佐助はかすがにチョコを貰うべくあらゆる手段を使った。
 時には廊下ですれ違う際に、時には階段の踊り場で殴られる覚悟で、時には食事中に木の上から脅かしたり…………様々な手段を使った。
 が、かすがが佐助にチョコをあげることはなかった。それでも佐助はかすがにちょっかいをかけるのが好きで粘る。










「なんたって!バレンタインだもんね!」
「だよねー!………って風来坊の旦那じゃん」
「頑張るねぇ、佐助」
「うん、だって俺様はかすがのカレシになるって━━━」










 佐助の頭の後ろからスコーンッといい音がなる。佐助はあまりの痛さに頭を抱えながらしゃがみこむ。
 大丈夫か?とあたふたと佐助を心配する慶次は佐助の後ろを見ると、さっきまで2人が話題にしてたかすがが怒った顔でいた。慶次は「あちゃー……」と苦笑いをこぼす。









「お前の彼女になるなんて言っていない!!言った覚えもない!!!」
「いや………だから俺様はカレシになる候補にって言おうとして………」
「候補なんてお前が入っているわけないだろ!!」









 かすがはフンっと怒りながらまたどこかに行った。佐助はというと、「ちぇー」と不満そうにかすがの後ろ姿を見ていた。









「かすがちゃんもかすがちゃんで一途だよねぇ」
「うん、けど、かすがでしょ?」
「え?」










 佐助は背中のほうを見て微笑む。慶次は状況を読めないまま首を傾げる。









「全く………素直に渡したらもっと嬉しいのにさ」









 佐助の手には小さな箱があった。それは、かすがが佐助の頭に当てた物だった。
 佐助はリボンを引っ張り箱を開けると、そこには小さな生チョコが詰められていた。

 その生チョコをパクッと口に放り込む。








「ん、相変わらず美味しいね。かすが♪」



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