第二弾  三成編




「チョコです!受け取ってください!」
「いらん」

「私と付き合ってください!!」
「失せろ」

「私の愛を━━」
「知らん」








 三成にチョコを渡しながら告白した人が次々と破られていく。私はそれを恐ろしいと思い、女の子達が可哀想とも思った。




 どれも、三文字返事だからだ。











 そんな三成をたまたま三度も見かけてしまった私もまた三成が好きな人の一部なのだ。
 もうこれは、諦めろと天が言ってるのでしょうか。それとも、惨めになれと言っているのでしょうか。

 どちらにせよ、私は嫌な思いでこのバレンタインを過ごさないといけないらしいです。溜め息が出てしまう。



 そんな中で過ごす休み時間のことだ。








「苗字、貴様日直だろう。私と共に来い」
「え?あ、うん」








 突然三成に呼ばれて、私は席を立ち、三成のあとを追いかけ教室を後にする。

 三成の早さは異常で、小走りでも追いつくかどうかの歩き方だった。絶対せっかちなのだろうなぁ。







 そうこうしていると、ある教室に三成は入っていく。そこは『生徒会室』と書いてあった。生徒会室に何があるのだろうか。







「苗字」
「はい?」
「これ持て」







 それは大量のプリントが三段に分けて置いてあった。私は血の気が引いた。







「………これ?」
「ぐずぐずするな。さっさと持て」
「私、こんなに持てないよ……?」
「……?何言っている。これを持てと言ったんだ」







 三成はそういって私に渡したのは紙袋に収まったプリントだった。……あっちの大量のプリントでなくてよかったと心からそう思った。
 三成もまた同じ紙袋を手に持って、生徒会室を後にした。








「みつ………石田くんって何でチョコ貰わないの?」
「貴様に言って何になる」
「だって、気になるから……しかも必ず三文字返事だし……」
「……………」







 生徒会室から教室まで結構な距離がある。三成のあとを追いかけてて気にはならなかったが、さっきより遅い歩き方だったので、バレンタインについて聞いてみた。

 私と三成は中学のときからの付き合いで、特に仲がいいというわけではない。だが、三成と話せるのは生徒会の先輩と私くらいだと知り合いが言っていた。
 確かに目つき悪いし、ズバッと人が気にすることを言う、はっきりしすぎている人だ。
 おまけに中学からこの高校まで一緒の生徒会の先輩、豊臣先輩と竹中先輩にかなり忠実な人。引く人も数知れず。


 だけど、そんなとこも踏まえて私は彼が好きなのだ。そう、毎年あげてない本命チョコがその証だ。
 今年こそはあげたい、とそういう一心で聞いてみたのだ。もし、誰からも受け取らないなら来年から作らなければいいのだ。

 だから、答えが知りたいのだ。







「…………誰からも貰わないというわけではない」
「どういうこと?」







 すると、三成は急に止まり、勢いよく私のほうを振り向く。何が起きるのか分からない私はただ立ち往生するだけ。
 三成はこっち向いたと思うと、紙袋を持っていない左手を私の前に差し出した。








「石田くん?」
「三成」
「え?」
「昔はそう言っていただろう。名前」







 急に下の名前を呼ばれて少し胸が高鳴る。
 そう、中学のときは普通に「三成」と呼んでいた。三成も私のことを「名前」と呼んでくれていた。
 だけど、いつしか三成は「苗字」と読んで、中学の時にはノリで入った生徒会に入らなかった分、距離が開いてしまったのだ。








「貴様からの物は受け付ける。秀吉様と半兵衛様の分もあるだろうな?」
「………ぷっ…もちろん。でも」








 最初に食べて欲しいのは三成かな












 距離が離れたと思ったのは、案外私だけだったようだ。



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