Trick○○トリート


 Trick or Treat

 この言葉は魔法の言葉だと子供の頃は信じていた。何せその言葉を近所の人に言っていたらお菓子を確実にくれるからだ。それも10月31日限定の、魔法の言葉。
 何故この日限定の言葉なのかは幼い頃深く考えてなかったのだが、小学生の4年生ぐらいだっただろうか。ふと、それはそういうイベントと分かってしまい、それで納得してしまった。









「何ボーッとしてんだよ?」
「あ、元親。おかえりー」
「おう、ただいま」









 何故そのようなことをここで言うのか?それは今日がその《Treat or Treat》の言葉が使える日だからだ。
 それもテレビをただジーッと見ていて、ふと思い出したからだと思う。



 今の私はもうすぐ結婚式をあげる予定の長曾我部元親という男と共に住んでいる。
 共働きであまり一緒の時間はないが、夜には少ない時間で一緒だ。これだけでも私は実に充実している。
 結婚式を挙げずとももう良いのではないかと思うが、それを言うと元親が拗ねるので言わない。私自身も何だかんだで結婚式を早く挙げたいと思っているからね。








「ご飯にする?お風呂にする?」
「名前が食いてぇ」








 凸ピンを一発、部屋に響きわたるくらいベチンッ、と食らわした。痛かったのか、元親は凸ピンを食らったおでこを両手で押さえながら「いってぇ……!」と唸っていた。








「お前の凸ピンめちゃくちゃ痛ぇこと、自覚してねぇだろ……!」
「元親が悪いでしょ。あと凸ピンはそんなに痛くしてない」
「ぜってー嘘だ……」






 いきなり変なことを言うな、馬鹿。そう言いたいが、何故か言葉が出なかった。だから手が出てしまった。
 私はソファーから立ち上がり、キッチンに行こうとしたその瞬間に、元親が私の腕を持って立ち上がる感覚があった。
 すると元親は突然こう言ってきた。







「トリックオアトリート」






 そう言った瞬間、私の身体は元親の方を向いた。そして、元親は手を腰に回して顔を近付け────私は元親の口元に手のひらを瞬時に覆い被せた。






「………?」
「ほら、食べてよ」
「は?」
「手のひらに飴があるからこれでトリックオアトリートはなし」







 そう言うと元親は面白くないと言うように目を細めた。実はそう言うと思って密かにポケットの中で包装を破って手の中に忍ばせていたのだ。
 元親は仕方なく私の手の中にある飴を舐めとる。その舐め方は少しこそばゆく感じた。

 これで悪戯は出来まい、そう思ってまたキッチンに向かおうとした瞬間だった。






「トリックバッドトリート」







 そう言ってまた振り向かせられる。そして私は─────







「…………何これ。ズルい」
「へへっ。毛利が言ったとおりになっちまったけど」







 ハッピーハロウィン!



 彼はそう言ってまた私に口付けを落としたのだった。














*Treat but Treat
   ‥‥‥お菓子をくれても悪戯するぞ?
* 6/24 *
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