とある疑問話

 七夕とは?








「一番有名なものが織姫と彦星のお話ですかね。」
「あっ!それならこの前本で読みました!確か、えーっと……天の川を隔てた2人のお姫様と王子様のお話ですよね?」
「はい、そうです。大正解です、鶴ちゃん」
「やりましたっ☆勝利の”ぶいさいん”ですねっ!」
「ぶーいぶい。いえーい、です。」










 鶴の字の両手と名前の両手が勢いよく音を立てて鶴の字は嬉しそうに拍手をする。

 だが、俺は疑問に思った。何せ俺が聞いた七夕とは話が違うからだ。
 俺が聞いた七夕は、細長い紙に願い事を書いたら願いが叶う、というものだ。織姫やら彦星といった女が好きそうな話にはトンと耳にしたことがねぇ。興味がない………といったら嘘になる。
 ………まだこういうのに興味があるたぁ、俺もまだガキだな……と幼少期の頃を思い出しそうで嫌だから頭を右へ左への繰り返しをする。あ、やべ、頭振りすぎた。
 頭を少し手で押さえながら俺は名前に聞いてみることにした。








「なぁ、名前」
「何でしょうか?」
「七夕ってやつは願い事が叶うやつじゃねーの?」
「おや、それも当たりですよ。」
「っし!」








 思わず拳をつくって喜んでしまった。しかもそれをちゃっかりと見ていたヤツが1人。
 毛利は雑誌で顔半分見えねぇようにしてるため、表情が全く分からんが、あの目は人を馬鹿にしている目だ………すっげぇこっちを見ては冷ややかな目を送っている。
 気をそらすように作りかけの”くっきぃ”に手を出す。








「……そのよ、その話と願いのやつって関係あんのか?」
「あぁ、ありますよ。知りたいですか?」
「「知りたい(知りたいです!)」








 鶴の字まで言うとは思わなかったため、一度鶴の字の方に目をやると「べーっ!」と舌を出して馬鹿にされた。頭に来たが、一度それを抑え込み、後で頬を思いっきり引っ張ってやる……と思いつつ”くっきぃ”の生地を練る。









「織姫と彦星は天の川を渡って会わないと行けないんです。橋や踏み石もない天の川をどうやって渡って会うと思いますか?」
「天の川を干上がらす」
「天の川を割る」
「ビューンと渡るんです!」
「さすが婆娑羅、もう何でもありなんですね。お腹が捩れて笑えます。」








 といって笑ってねぇ顔をするのが名前。だが、当の本人はそれで笑っているらしいが、俺や鶴の字、ましてや毛利までも、笑ってないと言う。それくらい、アイツの表情がないのだ。








「まぁ、ここは現実的に言いますと、皆の夢を乗せた短冊で道を作るらしいんです。」
「まぁ!ステキですぅ!」
「全然現実的じゃねぇよ!」
「紙は水に濡れれば破れて役目が無くなるだけぞ」









 思わず突っ込んでしまう話に色んな意味で驚く俺。







「どうせ御伽噺(おとぎばなし)なんです。現実的なんてありませんよ。」
「じゃあ何で現実的に言えばなんて言った──」
「あ、それでですね、願いを書いた短冊なんですけどね。」
「無視すんなっ!!」








 名前の話からするとこうだ。

 一枚の短冊よりもより沢山の短冊を集まることによって彦星と織姫に会える丈夫な短冊の道が出来るらしい。その道を作ってくれたお礼に、短冊に綴(つづ)られた願い事を叶えてくれるらしい。
 何とも変な話だが、その話に目を輝かせているヤツが1人いた。







「はぁ………うっとりするお話ですね……!私、思わず私と宵闇の羽の方を連想しちゃいました……」
「北条の忍が難儀に思えてくるわ」
「しかも一年に一度しか会えないんですよね?私だったらとても耐えられないですよ」
「一年くらい待てぬ奴は愚か者よ。ましては恋、等と現を抜かすから貴様は一生無知な巫女のままだと言っておろうが」
「言われたことないですし、否定しないでくださいー!!毛利さんには分からないんですよ!」
「分かりとうもないわ、この小娘風情が」
「むぅー!毛利さんの意地悪!鬼!」
「鬼は長曾我部であろうが。我は誠のことを言ったまでよ」









 鶴の字の言葉を濁すように毛利が嫌味な発言をしたため、2人の間で火花が見えた(気がする)。俺は”くっきぃ”を作っているため、口出しはしなかったししたくなかった。とばっちりは御免だ。
 ”くっきぃ”の型を取る作業をしていると、いつの間にか名前が横にいた。すると、パシャリと音がする”けーたい”という物を持って何かをしていた。いいなぁ……それ、すげぇいじりてぇ……








「何してんだ?」
「気にしないでくなんしょです。メモリアル保存なのです。」
「めも……?何だよそれ?」
「メモリアル保存は、メモリアル保存なのです。」








 またパシャリ、何かされた。何をされてんのか分からないまま、名前に催促されまた”くっきぃ”作りに専念する。



 いつか絶対あの絡繰りをいじってやり返してやったら面白ぇか?なんてな。
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