ただの偏見


 コイツが男にしか見えない?No、男勝りなだけだ。俺はそう思っている。
 何せ女なのかどうか疑われる程、コイツは強気で喧嘩早い。しかも女に慕われてる。この俺と張り合える程に慕われてるのだ。なんて奴だと思う。
 だが、ダチにそのことを言われるともの凄く複雑な顔をするのだ。








「私も苗字さんのような勇ましい人になりたいわぁ」
「え……あ、あはは、勇ましいとかねぇよ」
「そんなことないよ!女子皆の憧れの的だよ!」
「あ、……あはは…」
「あー!今ウソだと思ったでしょ?」









 あぁ、またその顔をするのか。所謂”苦笑”というものを。
 最初は何が不満なのか分からなかったが、それは自分があの輪の中にいたら嬉しいだろ、と当然のように思っていたからだ。
 だが、ふと思った。それは《男》の俺が思うことだと。アイツはただの”男勝り”なだけで《女》なのだと。
 だから俺はそいつを《女》として扱おうと思った。









‥‥放課後‥‥









「Hey,苗字。アンタ今日も女にモテてたな」
「反感は別にいいが、逆恨みはよせよ。オレだって好きでモテてるんじゃねーから」









 嫌味に言うようにするのは俺なりの挨拶だ。まぁ、苗字がそんなこと知る由もねぇが。ククッ、と笑えば苗字は困った顔をする。
 さて、今度はどんな反応をするか。It's show timeってところか?









「名前」
「っ?!……何だよ、急に下の名前で呼ぶなんてよ」
「Ah?なんだ?なーにこんなことで赤くなってんだよ。下の名前を呼ばれたことないような反応しやがって」
「……………呼ばれたことなんかないわ」









 Huu~,こんなんで可愛い反応するなんて、やっぱり女じゃねーか。我が物にしたらどんなに気持ちいいんだろうなぁ。








「──アンタは女だ」
「………だから何さ?」
「俺はアンタを女として見ているんだ、苗字」
「だから──!?」









 ジレってぇ奴だ。そう思いながら俺は名前の手を引っ張ればまた赤く頬を染める。これが何とも楽しく、嬉しく感じる。
 今までの女よりも楽しく感じる。コイツだから嬉しく感じ、彼女だから楽しく感じる。









「なっ……何すんだよ!」
「アンタが苦手な英語なんかでいわねぇからちゃんと聞けよ?俺の優しさだと思っとけ」
「はぁ!?」






「アンタは俺の女になれ」









 耳元で言えば耳まで赤く染める。
 だが、すぐに手を離され怒ってるのか照れてるのか分からない顔をしながら俺を睨む。








「だーれがなるか!!バーカ!!!オレは…」
「返事はいずれ変わる。you see?」
「知らん!!てめぇなんて知らん!!」








 そういって背を向けられて教室を出ていく。
 だが、この俺をナメてもらったら困る。むしろ余計に俺の物にしたくなったんだ。







 竜の目を盗んだお前が悪いんだからな?

 
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