意地+k=願い



 ただいま、片思いなう。










「………ツイートっと」
「何してんの?」
「ぎゃあー!!!」










 今の!!今の見られてないよね!?
 急に後ろから声掛けられたらため心臓が飛び上がってガタッと激しい音を鳴らして席を立つ。それの衝撃で携帯を落としてしまう。勿論、先輩はそれを見て何くわぬ顔で拾おうとするが、私がそれを許さなかった。










「落ちたよ」
「あー!!!ダメーーー!!」
「イテッ」









 焦って私は先輩の手を払いのけ、自分の携帯を素早く取る。やってしまった………と思ったときには既に遅し。
 大声で言ってしまっていた為、周りの目は完全にこちらを見ており、その現場を見ていた同級生たちが近付いてきた。









「苗字さん、さっきのはよくないよ」









 人が人を伝って私に目を向ける。段々と恐怖が押し寄せてきて私はとうとう耐えきれずに教室から飛び出た。










「前田先輩、大丈夫ですか?」
「あ、うん、大丈夫だよ。ありがとう。俺行くね」




















 場所は屋上。私は極度、という訳ではないが、人の視線が怖く感じるのだ。誰かの後ろに隠れることはしないが、高校に入る前まではこうして逃げては空を見上げることがある。
 最近ではなかったのだが、やはり人の視線が怖いらしい。早く直したいものだ。
 そうでなくては、いつまでたっても”コレ”が成長しない。この感情が、片思いからの一歩が。








「はぁ………」








 溜め息を空の雲に一つやる。この雲は溜め息の塊ではないのかというくらい大きく、私を影の中に入れさせる。
 お腹すいたのなら溜め息をくれてやる、など訳分からんことを雲に呟いてからまた一つ溜め息をこぼす。







「あ、ここにいたんだ」
「ひっ!!」








 驚いて変な声が出てしまった。後ろを振り向けば前田先輩がそこにいた。少し笑いそうな顔している……








「驚いた?」
「…………少しだけです」
「そー?ははっ」








 そんなに面白かったのか?先輩は笑いながら私のところに来る。あー……それ以上来ないでぇ……!
 そんな心の声など聞こえもせず、前田先輩はグンと私の隣に来て空を眺めた。








「きれーだねー。やっぱ屋上がいいな」
「………はい。あの、何でここに?」
「んー?何となく、かな?」









 上半身を手すりに預けながら先輩は答える。その間にもバクバクと心臓がなっている。
 そう、片思いの相手はまさにその前田先輩なのだ。いつからかは分からない。でもこの人が好きなのだ。
 髪とか手とか、色々と触りたいのだ。…………変態ではないぞ?
 でも、前田先輩には「ねねさん」という先輩が片思いしている相手がいる。









「前田先輩は━━」
「慶次!」
「あ?」
「そんな怖い声を出さないのー……慶次でいいよ」









 思わずドスの利いた声を前田先輩に言ってしまったが、前田先輩はもう一度同じことを言う。
 って慶次でいいって言った?私の聞き間違い?








「慶次、でいいんですか?」
「うん、いいよー」








 へらっと笑いながらこちらを向く。わー……!何この人、すごく母性本能が擽(くすぐ)られる……!可愛いだね、うん!
 まぁ、言葉に出しては言わないが。








「じゃあ………慶次先輩ですか?」
「うん、それでいいよ。あ、ほら名前ちゃん、雲から光が差し込んでるよ」









 「あ、ホントだ」と言えばまた「きれーだねー」と慶次先輩が言う。さっき言い掛けた言葉が何だったのか分からなくなったが、もういいやと思った。
 何せこの雨上がりで一番綺麗な景色を先輩と見ることが出来たのだから───














『先輩と景色をみている。幸せだ』










「また携帯触ってるー。何してんのさ?」
「見ないでーーーーー!!!」
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