すれちがい
「大きくなりすぎて可愛くない」
「はは……そう言われてもなぁ…」
どうしてこう、男子とは急に大きくなるのだろうか。女子のほうが成長は早いとは聞くが、男子はそれ以上に急激に変化をしないか?
特にこの男、今机の上で日番日誌を書いている家康。つい最近までは私が見下げる形で可愛かったのに。何で逆になるのだろうか。
「家康、もう一回立って」
「何度やっても同じだぞ?名前」
「いーからーっ!」
やれやれ、と笑いながら家康はシャーペンを置いて私の我が儘につきあう。
しかし、背伸びをしてもやはり家康のほうが背が高かった。
いつの間にか、彼はこんなに高く…………私は……
「…………うん、そうだよね」
「名前?」
「………」
少し寂しかった。それが本音だ。
何度見ても同じ。あの頃の家康ではなく、強く何でも受け止められる少し大きくなった身体。助けなんてもう必要ないんだね。
きっと高校にあがれば更に友達が増えて、余計に私なんていう存在がなくなるだろう。
だから、せめて今だけ、中学生活最後の日ぐらいは。
この想いに気付くなんて思わないけど、気付かれないように、一緒にいさせてください。
*** *** ***
やっと彼女の背を抜かした途端、彼女の小さい身体に今まで気付かなかった。今までこの小さな身体に守られてきたのだな。
そう思うと少しワシが恥ずかしく思えた。笑える話だ。
だから今度はワシが守ろう。そのために強くなろうと思ったのだから。
そして、いつか言おう。
ワシの想いを━━━━
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「後ろをみる人、前を見る人」