第7話  手拭い




 次の日から、毛利家に一人増えた日常が始まった。

 美伊は爺に案内してもらった部屋で一夜を過ごした。うんと背伸びをして障子を開ければ日が差し込んでくる。朝の日差しはとても柔らかな暖かさだ。
 すると、風が吹き金木犀の匂いがする。



「あ、近くにあるのですね!」



 そう言って、寝間着のまま部屋から飛び出た。
 侍女が来たときには既に部屋にいなかったという……






 トタトタと走る音がし、元就はふと音のするほうをみる。すると、侍女らしき人物が金木犀を見ていた。元就は不快に思い、顔を洗って濡れた顔を拭くのをやめ、近付く。

 しかし、よく見ればここの侍女ではないと顔を歪めもう少し近付いてみる。
 そして元就は「まさか……」と思い声をかける。



「貴様………美伊か?」



 そこにいたのは寝間着のままでいる美伊だった。
 ハッと美伊は元就の方をみる。元就は「またか……」と少し溜め息をこぼす。美伊は苦笑しながら元就をみる。




「も…申し訳ございません………思わず……」
「……貴様の脳は金木犀だけか?」
「そんなことございまっ……元就様、顔が濡れていますよ?」




 美伊は反論しようとしたが、元就の顔が濡れていることに気付き近付く。美伊は懐から薄紫色の手拭いを取り出すと、元就の顔を優しく包み顔を拭く。
 元就は一瞬その行動に驚き胸が高鳴ったが、美伊の手を払いのけた。




「…っ…………貴様の手などいらぬ!!早に去れ!!!」



 そういって元就はズカズカと部屋に戻りながら、肩にのけていた手拭いで顔を覆い隠しながら拭く。





「(くそっ………なんだ、この高鳴りはっ……腹立たしいことこの上ない……!)」










 



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