第5話  姫会開始







 数刻後、姫会が開催された。姫達が広間を囲い、順に座っていく。
 元就はというと、広間の奥にある姫会のために用意された部屋から姫達の様子を伺う。姫達からは元就の顔などはわからないようさらしで隠す。

 集まった姫達は二十近く。姫達は各々の家の話や自分の好きなことなどを話し合う。扇で顔を隠しながら話す者や、隣同士だけで楽しむ者、様々である。
 だが、一人だけ何もせずにただ景色を眺める者がいた。元就はそれに気付き、目に留まる。



「あれは先の………」



 よくよく見れば、先程金木犀を見ていた女がいた。どこを見ているのか、他の人の話など聞きもしていない様子だった。忍びならばしかと情報を持たねばならないと思い、庭など見ることはないと思うと元就は予想していた。

「(これも策の内か…?)」

 そう思い、彼女をジッと見るのであった。女はというと、「ここからでは匂いしか金木犀が楽しめないのですね……」と一人残念に庭を見つめていた。
 一方、爺は元就の後ろから様子を伺っていた。元就が誰かを見ているのに気付き、誰を見ているのか気になったのか元就に問いかける。




「誰か気になる御方がいましたか?」
「忍びがいるやもしれぬぞ」
「………はい?」




 そう言って元就は指をさす。爺は目が点になる。




「………元就様、あの方は名は知れてはいませぬが、同じ中国の姫、美伊姫でございます。あの方はここに来るなり、金木犀のことを気にかけているような姫様です。更にはその他の花や木の匂いも感じて水を自らやる方にてございます。そのような方が忍びとは……」



 爺の話を聞きながら、そういえば、と元就は思い出す。彼女は庭の金木犀を見ていた。そして、その横には樽と水汲みが置いていた。それを見て微笑んでいたのだ。
 それから何を考えているのだと思い、声をかけた。
 本当は忍びなど疑いをかけるつもりはなかったのだが、癖でそのように頭が働いてしまったようだ。大体忍びがいたからといっても、元就はちゃんと対忍び用の策は練って用意しているのだから警戒しなくても大丈夫なのだ。



「元就様………?」



 元就の目の色が変わったのを気付いた爺は問いかける。元就は爺のほうを向く。



「あの姫を部屋に呼べ」
「元就様……御意にございます!」



 初めて元就は隣の部屋に姫を呼ぶ。爺にとってこれほど嬉しいことはないだろう。元就は顔色を変えずに隣の部屋に行く。
 美伊は爺に呼ばれ、元就の部屋に誘導されていった。それを見た姫達は「何であの人が!?」と驚きを隠せないまま美伊を見ていたのである。







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どちらぞ



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