第4話  女







 元就は部屋から出てまもなく、井戸の近くを通り過ぎようとしてたときだ。女が庭の花を見ていた。上等な桃色の羽織を着て、髪を下のほうで小さく結っていた。察するに、今回姫会に参加する姫であろうと元就は思いつつ、部屋に戻れと言うために声をかける。



「そこの女、そこで何をしておる」



 声をかけられた女はふいに元就の方を向く。そしてニコッと笑いかけてぺこりと頭を下げる。



「申し訳ございません。この金木犀の匂いに釣られてこちらに来てしまいました」



 そう言ってまた女は金木犀を見る。「とても綺麗な金木犀ですね」と元就に言う。元就はただ黙って聞いていた。




「………貴様、姫会出席の者であろう」
「はい、ですがとても退屈してしまい、外に出たのです。するとこの匂いが漂い、近くまで来たのです」




 また女は元就に笑いかけた。しかし、元就は姫がこのようなことをするのか?と疑問に思った。もしかしたら偵察にきた忍びではないか自分の目で確かめる。女は疑問符がつくかのように首を傾げる。




「何か私の顔についておりますか?」
「………………襲撃するためにここにおるのか?忍び」
「忍び…………?」



 何のことを言っているのか分からないのか女は更に首を傾げる。元就は「違うのか…?」と疑問に思いつつ、沈黙が続く。
 元就はハッとして時間がないことを思い出す。




「まぁよいわ。早に部屋に戻れ、女」
「………?はい」




 少し間があったが、女はまた微笑む。眉間にシワを寄せ、元就は女を睨みつけてから去っていった。



「とても綺麗な方でしたが、どちらの方だったのでしょうか……」


 少し顔を赤くしながら元就のことを思いながら部屋に戻っていった。


「元就様でしたらここにいたのはご迷惑だったかしら?」










戻るのか
目次に行くのか
どちらぞ



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