第3話 姫会
《姫会》とは、普通に想像すると姫達が集ってお茶会などで楽しむものだと思われるが、毛利家の姫会はまた違う。
毛利家の姫会は、姫達が大広間に集いお茶を楽しみながら話し合う。それと同時に、別部屋で元就が姫達の様子を伺っているのだ。所謂、見合いと同じ状態なのだ。ここで元就に気に入られたら正室・側室のどちらかになる。
だが、元就は幾度この姫会を開いても候補として残る姫は未だなし。爺は世継ぎのことを考えると不安で仕方ないのだ。今回もこの姫会を開くが、たまに元就が面倒くさがり出ようとしないときがある。
そして、更に案じているのが
「元就様、姫様達をあまり怒らせないようお願い致します。本当にこの姫会が開けなくなりますぞ」
「………………」
そう、元就は気に入らないなら相手の気を触ることを話すことがある。日に日に姫達の数は減る一方、これではダメだと爺は思い、忠告してきたのだ。
元就に忠告や注意をするのは爺くらいで、他の者がそのようなことをすることはない。何故なら『冷徹無慈悲・詭計智将 毛利元就』と威名があるため。敵味方関係なしに「捨て駒」扱いで、元就の気に触れると斬り捨てるなど造作もないのだ。それを恐れ皆は元就に頭が上がらないのだ。
「我は真のことを言ってるまでのことよ。あやつらが狙っているのは我の地位だけのこと。そうではないか?」
そういって元就はご飯を箸で取り、口に入れる。爺はただ黙り込み焼き魚に手をつける。
元就の言っていることは本当のことで、大抵の姫達は自分たちの地位をあげたいがために元就に近寄るのだ。元就は戦国の大名と呼ばれるくらいだ。それが普通なのだ。
だが、元就は「そんな輩は側に置きとうない」と頑なに言うので決められないでいるのだ。
時代は戦国、世は乱世。愛する者同士がいるのはごく少数な時代だ。
「近々戦もある。その為の準備も怠るでないぞ。よいな?爺」
「……御意」
飯を食べ終えた元就はその場から離れ、外に出て行った。爺はその場に残され、食事をする。
「………松寿丸様のお心を開く者はいないものか…」
ハァと溜め息を一つ零して爺は食事を終える。
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