第8話  天衣無縫



 とある村の女子の話。

 そこの村は特に栄えているとは言えないが、人が人を支えて暮らしている小さな村だった。だが、小さいながらもそこの人たちは笑顔が絶えなかった。
 そんな村の一人、葵という女子がいる。彼女は最初からこの村にいた女子ではない。数年前、何かに追いかけられたらのか、上等な青い着物を羽織って、ずたボロな着物を下に着て、足を見れば泥まみれでこの村に逃げ込んだのだ。理由は、村の人達にも分からないが、村は彼女を歓迎して数年間ここに一人暮らしているのだ。


「葵ー、こっちを手伝ってくれんかー?」
「おー、今行くー」


 齢20。 少し男勝りな彼女は村の畑や家事の手伝いをして村を支えていた。




「いやぁ、それにしても今の世が一番平和やねぇ」
「これも家康様のおかげですね。ありがたや、ありがたや……」
「家康って誰?」


 老人夫妻の会話を耳にした葵は聞いてみた。老人夫妻は驚きを隠せないまま葵をみた。
 何かおかしなことでも言ったのだろうか?そう思い、葵は首を傾げた。


「葵……あの、あの家康様を知らないのかい…?」
「うん、知らない。だから聞いたんだけど………どっかのお偉い武将さんなの?」
「お偉いどころじゃねーさ!今の日の本を平和に導いて下さったお方さ!まさに神様やよ!」
「ふーん、そうなんだ」


 特に関心を示さずに葵は仕事に戻った。老人夫妻はそんな葵を姿が消えるまで見つめた。


「家康様を知らねぇ人もいたんやなぁ……」
「仕方ありませんよ。葵はここから外にあまり出ようとはしませんから」
「不思議な子やねぇ、あの子は」


 葵は何故この村の外から出ようとしないのかは村の不思議になっている。だが、葵は気にせず今日も村の手伝いをするのであった。










 一方、家康の城では見合いが始まっていた。家康は広間の上座に座り、一人ずつ話したりした。しかし、どの人も話の話題は家の権力や功績やお金の話ばかり。家康は苦笑いを隠せずに話を合わせていた。


『やはり、そういう話になるものか。権力で、金で、功績で……それで人が決まってしまうのか…』


 家康はどこかやるせない気持ちを出さずにはいられなかった。結局は、”権力”という力でねじ伏せているのと同じなのだという事実を知って

「これでは秀吉公と同じだな」

と苦笑しながら言葉をこぼすのだった。




 結局、その日に側室・正室は決まらなかったため、また次の日に回されたのだった。











 次の日、家康は少し急ぎ足で城の外に行こうとしていた。今日は家康の友が直々に来る日なのだ。家臣に出迎えを任せれば良いのだが、家康が珍しく自分から行くというので誰も止めはしなかった。
 そして、その友は海から来るので港まで家康は行ったのである。

 港につくと、七つ酢漿草(かたばみ)の紋を持った船がそこにあった。



戻るか?
それとも
目次に行くか?


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -