第7話  本田忠勝







 上空を飛ぶ忠勝とその背中に座って乗る家康。家康は幼い頃のことを思い出していた。青い鳥を見た日のことを。


「……………」
「………?」
「ん、あぁ、すまない。黙ってしまって。…………少し思い出していたんだ」
「……………??」
「ははっ、気にしないでくれ。それよりも早く帰らないとだな」
「……!!!」
「すまないな、忠勝。急ぎ頼むよ」
「……………!!」


 忠勝は先程よりも早く飛行した。急ぎ城に戻るために。



「(まさかここであの時のことを思い出すとはな。元気にしているだろうか………)」



 思いふけて通りかかった村に目を向ける。懐かしく感じるように家康はその村を見た。
 青い鳥のおかげで出会えた人たち、楽しかった幼き頃の時を。今ではめっきり行かなくなってしまったあの村を。



 もう一度だけ、会いたい。あなたに。












 夕刻。家康は約束通りの時刻に帰ってきた。忠勝は家康を送るとまた飛び立った。



「おかえりなさいませ、家康様」
「あぁ、ただいま。で、何か用だったかな?」
「はい、家康様。本日は家康様にお目通り頂きたい姫様達がおります。既に姫様方は広間に集まっておいででございます」
「……………」




 まさか政宗が言っていたことが本当だったので家康は少し強張った顔をした。少し黙った後に家臣に確認するように聞く。


「………何故、姫様達がこの城にいるのか聞いてもいいか?」
「それは、勝手ながら家康様の正室、側室を決めるためでございます」


 あぁ、本当にそういうことだったのか。そう思いながら家康は空を見上げた。快晴で雲一つない青空が少し腹立たしかった。




 家康は装束から袴に着替える。いつもより綺麗なものを着ているのは、家臣が揃えた姫様方に失礼のないようにだ。
 だが、家康は煮え切らない表情で広間に向かった。



戻るか?
それとも
目次に行くか?


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