第20話 竹中半兵衛
どっちを選ぶかってどういう意味だよ。大体、あんたにどうこう言われる筋合いはないんだ。あたしが誰と仲良くなろうとあんたには関係ないでしょ。
それなのに………まるでどっちか片方しか仲良くしたら駄目みたいな言い方。腹立つのよ。綺麗な顔をしてるのに勿体無い性格だ。
『 二人は僕と秀吉にとって良き武将兵士だった、ってことかな』
……………はぁ?武将って、何変なこと言ってんだよ。あの二人は、………あの、二人は……………
秀吉?…………まさか豊臣秀吉なわけ?そんなわけないか。
『秀吉は君が思い浮かんでいる人物だよ?天下のその先を見る豊臣秀吉さ』
『そして、三成君と家康君、佐吉君と竹千代君はその秀吉の配下だったんだよ』
訳分からない。やめて。二人は武士な訳が………
『本当に何も知らないんだね。佐吉君は後に石田三成と改名して、竹千代君は徳川家康になったんだよ?』
……………いえ、やす……?みつなり…………?どっかで聞いたことが……
《家康って誰?》
《 葵……あの、あの家康様を知らないのかい…?》
《うん、知らない。だから聞いたんだけど………どっかのお偉い武将さんなの?》
《お偉いどころじゃねーさ!今の日の本を平和に導いて下さったお方さ!まさに神様やよ!》
あぁ、そうだ。この前爺ちゃんと婆ちゃんが話してた人物だ。神様とか何とか持ち上げられた偉い人………それが竹千代だっていうの?
それで、三成って人が家康に最後まで抗って、………死んだって……
それが……………佐吉……?
《葵ー、これからどうするのだ?》
《だからこれはここの茎の間を通してー……って不器用ー!竹千代不器用すぎだよー!あはははっ》
《竹千代は力馬鹿なだけだ。私を見よ!出来たぞ、葵!》
《ぶっ、佐吉のはちっせー!もっと大きく作っても大丈夫なのにー!》
葵の頭の中で走馬灯が過ぎる。
共に笑い合ったあの日はもう戻ってこない。
その答えは葵が叫ぶのには十分な理由だった。
「あ………ぁあ゙あ゛ああああああああぁあぁああああ!!!!!」
「いやっ……イヤだあああ!!!」
「返して!!あの頃の二人を返してよ!!半兵衛ぇええ!!!!」
葵は地面を何度も何度も叩き、叫び続けた。
村の人が外に出るにも十分過ぎた。半兵衛は一度夜の空に消えていき、しばらく様子をみることにした。
葵の前にあった碁盤と石は消えていたが、葵が握りしめている黒の石が物語っているかのように手のひらにあった。
『君には少し時間が必要のようだね。ふぅ………骨が折れるね』
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