第17話 絢麗豪壮
━━い……………、お………い……
「おいっ、家康!」
「はっ……!……あ……………も、もと……ちか…?」
「おー……ビビった………俺が悪かった。わりぃ、家康」
「え…………なにが、……だ?」
「アンタが本気だってことは分かった。軽々しく言ってすまねぇ。だが、本当に好きなら彼女のとこに行ってみろよ」
……あ、ワシは、思いふけってしまってたのか………。元親が悪いわけではないのに。何をしているんだ、ワシは。
ダメだなぁ……葵のことを思い出すだけで自分の世界に入ってしまうなんて…………。こんな事では日の本の絆どころか、周りの皆に迷惑がかかってしまうぞ?
……昔の自分と、何ら変わってない…。変わろうと思って今までやってきたのに。
これでは三成に申し訳が立たない……っ
「………い、や、……っ元親のせいでは……なっ、い……」
「うぇ!?どどど、どうした?!何で泣くんだよ!?」
「俺のせいか?!俺のせいだよなっ!?」と元親は泣いてしまったワシを見ながら慌てていた。いや、本当に元親のせいではないんだがな………どうしたものか……
泣きやもうにも泣きやめない自分に腹が立ってくる。
嗚呼、何も変わっていない。
「おっじゃまするよー…………って、どうしたの!?」
「お、おう、風来坊か!い、家康泣かしちまって………」
「いや、ちがっ…………っ」
「んー??何で何で?」
「………つーか、アンタ、何で入って来れたんだよ!」
「あぁ、謙信に頼まれて書状をね。だけど、そんな雰囲気じゃなさそーだねぇ」
彼の名前は前田慶次。ワシが日の本を統一する前に天下を取っていた豊臣秀吉公の友だったらしい。(ワシ自身よく分かっていないが……)
”風来坊”という異名を持ち、日の本をぶらりと渡り歩く。今は”軍神”という威名を持つ上杉謙信、軍神殿の元にいる。
あぁ、しかし、慶次とは関ヶ原の戦い以来話していなかったな。元気そうで何よりだ。
だが、涙のおかげで声がしゃくる。言いたいのに言えない。
涙よ、止まれ。
葵、どうやったら止まると思う?
「───………つーわけでよ…」
「へぇ、へぇ!!恋の悩みってやつだったのか!それなら、俺に相談しない?んー?」
「……っあ、えと…………だ、大丈夫っ、だ。~~~~~っ、ほら!」
「……………」
「………家康、素直になったっていいと思うよ?…前の俺だったら言わなかったと思うけど、さ」
ねぇ、どうして秀吉を倒したの?
……秀吉公が目指すものでは日の本の平和は出来ないと思ったからだ
すまない、慶次………お前にはちゃんと言っておきたかったんだ……
すまない………
決別していたとはいえ、やはり友だった秀吉公のことを気にがかっていたのだろう。だからこそ聞いたんだろう。
どうして秀吉公を討ったのかを。
そして、それからはちゃんと話した。これまでのこと、これからのこと。
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