第14話  佐吉






「なぁ………佐吉」
「あぁ、秀吉様………」
「佐吉!!」
「なんだ!!竹千代!私が秀吉様を拝めている最中に」
「あの鳥、何色に見えるか?」
「鳥?くだらぬ、鳥など所詮…………」







 佐吉は目を疑った。目を擦ってもう一度見るが、どう見てもいつも見る茶色い小さな鳥ではなかった。

 凛々しく、どこか花があって綺麗な、ここら辺じゃ全然見かけない



 青い鳥だったのだ。







「なんだ………あの青い鳥は……」
「やはり青い鳥だよな………初めて見る…」
「あぁ………」







 しばらく佐吉と竹千代はその場に立ち尽くし、ただ呆然と青い鳥を見ていた。そして、沈黙を破ったのは竹千代だった。







「なぁ、佐吉。こんな話聞いたことあるか?」
「…………?」
「”青い鳥を見た者がいれば、その者は幸せになるだろう”という話だ」







 佐吉はそれを聞いて目が開く。




「幸せに………」






 もし、この鳥を秀吉様に見せたら、秀吉様は誉めてくださるだろうか。喜んでくださるだろうか。半兵衛様と紀之助(大谷義継の幼名)も喜んでくださるだろうか。
 佐吉はそんな事を思うと、頬が赤くなり、走ろうと竹千代の手を引っ張る。竹千代は急に引っ張り出すので驚く。






「佐吉?」
「あの青い鳥を秀吉様に献上するぞ!!竹千代、手伝え!!」







 竹千代はそれを聞いてブッと吹いてしまい、「しゃーねーなっ!」と言って青い鳥を追いかけた。もちろん、青い鳥は追いかける二人に驚き、大木から飛んでいった。


 そして、夕刻━━━








「っだー!!ダメだ……はぁ…佐吉ぃ…一度帰ろう……」
「何を言っている!青い鳥は東の方に飛んでいくのが見えただろう!」







 青い鳥は見失い、走り疲れた竹千代はその場で寝ころんだ。佐吉は疲れてはいるが、「秀吉様の御為にぃぃいい!」という意志で青い鳥を探した。
 だが、足はガクガクして立つのもやっとなのが本音なのだ。









「それ、何刻前の話なんだよぉ……はぁ、はぁ…………それに、一度戻って策を立てた方がいいよ……秀吉公と半兵衛殿も心配してると思うぞ?」
「何っ!?…………それは秀吉様と半兵衛様に申し訳がたたん………仕方ない。戻るぞ、竹千代」
「もっとゆっくりあるこーよー……」
「もたもたするな!」








 結局、竹千代と佐吉は大阪城までフラフラして帰って行った。帰ってきた時には既に月が登っており、半兵衛と官兵衛の二兵衛にこっぴどく怒られたという。



 その後、竹千代の部屋で巻物を広げ、筆と墨で描き、佐吉と共にあの青い鳥を捕まえる策を作ったという。
 これが、家康と三成の初めて共に策を練ったものだという。



 そして、その次の日が、家康にとって運命の日となる日でもあった。



戻るか?
それとも
目次に行くか?


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