ここは、どこだ──

 ふよふよと身体が浮いている感じは分かる。だが、その身体が言うことを聞かず、動こうとしない。

 動けよ──

 頭は動いているのに口や目が動かない。時々口からぼこぼこと何かが出る音が聞こえる。そして後ろ側からもその音が聞こえる。これは何か聞き覚えのある音だ。

 なんだっけ───

 自分はこの感覚を知っている気がする。身近にあったような……そんな感じに陥る。だが、徐々に考えることが面倒になっていき、頭が重くなる。何だろうか、この感覚は……不思議と、居心地がいい。

 ねむい…………───

 身体は自然とよく分からない空間の底に行こうとし、下に落ちていった。




「…………か………もとちか……」

 誰だ……?俺の名を呼ぶやつ……
 微かに聞こえるそれは眠りそうになった元親の頭によく響いた。まるで弦を弾くように、ポーンと聞こえる。

「お前はまだ、海に落ちるべきではない」

 煩い……寝させろ……
 煩わしい、何で自分を呼ぶんだ?元親は眠気を妨げられ非常に不愉快になった。この冷たさが非常に気持ちよく、落ち着く。このまま寝たらどんなに気持ちいいか。寝たい、寝たい、寝たい………

「元親、お前はまだ会わなければならないやつらがいる。それでも寝るのか?海の底で眠るのか?」

 海の底……?
 元親には分からなかった。海の底で眠ってしまったらそれは死ぬのも同然だ。いや死ぬ。なのにこの話しかけてくるやつは「海の底で眠るのか?」と聞いてきた。
 俺がそんなとこで寝てるのか?
 あり得ないだろ、元親は頭の中で笑ってしまった。

「目を開ければ分かる。お前が今いる場所がどこなのか、どこで寝ようとしているのか」

 元親は重い目蓋を徐々に徐々にあげていく。左目は眼帯で覆われて何も見えはしないが、右目だけでも十分に見えた。そしてその見えた景色は青く暗く、太陽の光のようなものが丸く揺れていた。
 そこで気付く、この冷たさは海の中であり自分が今まさに寝ようとしていた場所なのだということ。

「~~~~~っ!!!?」

 それに気付いてしまった途端、息が出来ないことにも気付き、ボコボコと口から出てこなかった酸素が大量に出ていく。これは非常にまずい、先程まで動かなかった身体は動くものの、息が出来なければいずれ本当に海の底で眠ってしまう。身体を動かしもがいてみるものの、とうとう息が切れてしまった。

 ヤバい───!!

「はぁ、やれやれ。少し力を貸してやろう」

 すると元親を包み込むように赤いベール状の何かが元親を覆った。その形はまるで蓮華の華。その中はとても暖かく、まるで母の揺りかごのように気持ちよかった。そしてそのまま元親はその暖かさに身を委ね、仰向けの状態で眠った。
 

「我らが殿、どうか四国をお守りください」
「元親様、あなたが頼りです。どうか私たちの分まで生きてください」
「息子をよろしくお願い致します」

 何処からか幾多の違う声たちが聞こえる。元親にとってそれらは土佐の民たちの声に聞こえた。
 そして元親を包んだそれは海の底からゆっくりと上がっていき、徐々に太陽の光が近づかせた。

「私の出来ることはこれくらいだ。へたるんじゃないぞ、元親。───我が息子よ」





 それからのことは元親は全く覚えてなかった。ただ、水面にあがったら息が出来るようになり、思いきり息を吸い、生きている実感を得た。目を開いてみれば太陽が眩しく元親を照らした。
 すると後ろから「アニキー!!」という声が聞こえ、振り返ってみれば自分の軍の船と兵たちが手を降って元親に声をかけていた。それから元親は兵たちの助けられ船に戻った。着替えやら身体を拭くものを兵たちは手際よくやってくれた。

「わりぃな」
「もう俺たちヒヤヒヤしたんッスよ!?」
「豊臣と戦ったあと、海に落ちてそのあと武器しか見つからなくて焦りましたぜ……」
「あぁー……」

 そういえばそうだった。海から這い上がることで頭が一杯だったが、豊臣と戦って、そのあと要塞富嶽を爆破したあと、海に落ちたことを思い出した。その証明に、身体中が傷だらけの痣だらけだった。服も至るところぼろぼろになっていた。

「この船は土佐からとってきたやつか」
「へい。急いでとってきやした!」

 そうこう話していると元親の服は普段は着ない着物になっていた。淡い赤紫色をして波立つ模様がかかれている元親のお気に入りのものだ。

「ありがとよ、野郎共。けどこんなとこでへばる俺じゃねぇぜ!」
「流石アニキっす!!」
「とりあえず土佐に戻って酒を呑み交わすか!野郎共ー!!」
「「「オオーーーー!!」」」

 兵たちは分散して土佐に向けて戻る準備を進めた。

「アニキ、とりあえず怪我したところを包帯しときやすか?」
「おお、そうだな。お願いするぜ」
「へいっ!」

 元親は怪我をしたところを包帯に巻かれている間、海に落ちたときの記憶を思い出した。思えば不思議な体験である。フッと笑えば、治療をしてもらってる兵に気付かれ声をかけられる。

「どうしたんスか、アニキ?笑っちゃって」
「……いやぁ、なに。ちょっと海で可笑しなことの巻き込まれてよ。思い出し笑いしちまった」

 兵にはなんのことかさっぱり分からなかったが、元親は海が見える方向に視線を変えてボソリと呟く。

「ありがとよ、親父。土佐の皆」



 俺はこれからもアンタらの期待に応えれるよう頑張るから見ておけよ。



まくら姉こと高反発枕Pさんの静止画を見てたぎって出来た代物です!
でもごめんなさい、改めて静止画みたら華は絶対蓮華じゃない!!!でもなんの花か分からなくて結局蓮華の華で進めました。ごめんなさい(;つД`)
でも静止画とか他の動画とかかっこいいので気になる方はニ/コ/動/画かツイッターでみてくれですヤァ!!



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