出張で1ヶ月ほど地元を離れていた名前だが、今日その出張から帰る日だ。


 電車が発つ出発音や音声が鳴り響くホームで、名前は電車から降りていた。1ヶ月帰って来れなかった地元の駅を見ては、久々の言葉を使うに相応しい。
 名前は地元に帰ってきたらまず行きたいところがあった。名前の足は駅には留まらずに歩み始めた。







 向かった場所は全体が真っ白で、紫色のラインが入ったマンション。
 ここは名前の住んでいるマンションではない。では何故ここにいるのか?
 答えは行きたい場所だからであり、そして────

 名前はエレベーターに乗って6のボタンを押す。降りてすぐ右の部屋の前に立ち、インターホンを押す。ピンポーン、と軽快よくなり響く音がよく聞こえる。
 すると、インターホンから声が聞こえた。






『はい』
「あ、私だよー」
『…………は?』
「苗字名前、ただいま帰ってきましたー」







 少し間が空いた後、荒くインターホンを切られた。すると、慌てて玄関に来る音が聞こえたが、その後すぐにドスンと転んだ音が聞こえた。
 大丈夫か?と心配になるもそれは打ち砕かれるように扉が思い切り開く音がした。







「………えと、とりあえず、おでこ大丈夫?」







 あまりにも慌てて来る音と予想外に元親のおでこが赤くなっていたのに少し呆気を取られた名前だが、とりあえず元親のおでこの心配をしてみた。








「…………っ……!」
「わっ」








 元親は名前に断りもなしに抱きついた。だが、断りなどいれなくても名前は嬉しいのだ。むしろそちらのほうが良いのだ。
 何せ2人は恋人同士なのだから。







「帰ってくるんだったらちゃんと言えよ、ったく……」
「えー、それしたら驚かないじゃん。元親が」
「驚くとかそういう問題じゃねーだろ!」







 はぁ、と溜め息をを零して元親は抱きつくのをやめて名前を部屋に入れる。






「今帰って来たのか?」
「うん、そうだよ」
「言ってたらちゃんと迎えに行くのによ……」
「だからそれしたら──」
「あー!わーってるっつーの!ホント脅かすの好きだよな」
「元親の驚く顔が好き!」
「…………あー、そう…」







 好きと言われると否定するものが否定出来なくなった元親である。だが、やはり迎えに行ってあげて彼氏らしいことをしたかったようだ。
 そんなことも分かった上で名前は敢えて帰ってくる時期を言わなかったのだ。彼女が好きな彼の驚いた顔を見るために。






「あ、珍しい。いつもより片付いてる」
「まるでいつもはこれより酷いと言いてぇのか?」
「え、違う?」
「……………さっき片付けてる最中だったんだ」
「やっぱり」







 元親の部屋にはビニール製の紐やまだ袋から出されていないゴミ袋がテーブルの上に置かれていた。そのテーブルの近くにはいくつかのビニール紐で縛り止められている新聞紙の塊があり、それを見てわざとらしく名前は元親に聞いたのだ。
 元親はその間何かを我慢しながらコップに麦茶を注ぐ。名前も部屋の辺りを見回し、それが終わると素直にソファーに座った。







「やっぱ元親の部屋って元親って感じだよね」
「何だよ、それ」
「何となくだよ、何となく」






 元親は彼女に先程麦茶を入れたコップを手渡しで渡す。
 「コーヒーがよかった」と駄々を言うが、元親が仕返しとばかりに名前の髪を乱すように荒く撫でる。やめろぉ!と言えば、彼はやめた。だが、名前の髪は乱れ髪になったままだった。






「元親意地悪だ」
「どっちがだ。ったく」






 名前が座ってる隣にドカッと元親が座る。少しお茶を飲むと、元親はそれをソファの前にあるテーブルにコップを置いて名前の耳元でこう言った。






「ならこれで許してやるよ」






 そう言うと彼はまだ飲みきっていないコップを手にしている彼女に抱きつく。先程の玄関の時とは違い、がっちりとしがみついて名前の首もとに埋まった。
 少しこそばゆく感じるが、これが彼なりの甘え方なのだと分かれば名前は元親の頭を優しく撫でる。






「相変わらず変な甘え方をする鬼さんですねぇ。まるで子鬼ね、子鬼」
「うっせ。………今度出張から帰ってきて俺を呼ばねえと喰うからな」
「おー、怖い怖い。それはご勘弁」






 でも、それはそれで良いかも、と名前が思ったことは誰も知る由もなかったのだった。



 名前と元親の夜はこれからだ。



ごめんなさいいいいいい!!!(スライディング土下座)
リクのところにはキャッキャうふふふーな話を、と書いて下さったのにこれキャッキャうふふじゃねぇえええええ!!!。゚(゚´Д`゚)゚。
でも、その、個人的には甘いと思っております……orz
ですがこういうの打っててかなり楽しかったです!リクエストありがとうございました(*´▽`*)



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